変態教師は触りたい 3話

変態教師は触りたい 3話


 一日の授業が終わり、西園寺は廊下を歩いていた。
「(そういえば、前に藤原がコピ・ルアクとかいうコーヒーを出してたな・・・・・・)」
 コピ・ルアク。それは、ジャコウネコの糞から採られた高級なコーヒー豆。
「ふむ。(俺のを・・・・・・イケるか?)」
 この変態は、今日も絶好調である。
 顎に手を当てて碌でもない事を考えていると、
「せんせー、考え事ですか?」
 藤原が西園寺の肩を叩いて呼び止めた。
「今度、コーヒーの差し入れをとな」
「わーっ、楽しみですー!」
 生徒会の危機、到来である。

「あれ? せんせー、その本なんですか?」
 藤原が目をつけたのは、西園寺が持っている雑誌。
「生徒から没収したものらしい」
 その雑誌は、いまどき女子が読むようなティーン誌で内容にちょっとエッチな事が書いてある。
 教育上よくないと校長が生徒から没収したものだが、西園寺は読みたいがためにソレっぽい言い訳をして、校長から預かった経緯がある。
「へー、どんなのですか?」
「生徒には見せられない(これは俺が読むんだっ・・・・・・いや、藤原に見せて恥ずかしがる表情を楽しむのも一興か?)」
 度し難い変態だ。
「けちんぼですねー」
 それからは他愛ない話をして、生徒会室に向かう二人であった。
***

「ふむ。これで全部か、ご苦労」
 もうすぐ完全下校のチャイムが鳴るという所で、生徒会の仕事は終わった。
「ところで、この本はなんですか?」
 西園寺が机に置いていた雑誌を手に取った四宮は、ページを開き見た。
「おい。それは没収品で、生徒には――」
「初体験はいつだったアンケート。”高校生までに”が34%ですか」
 西園寺の制止を聞かず、読み進める四宮。
「嘘です! そんなに高くないですっ」
 だが、藤原の言葉を聞いた四宮はキョトンと首を傾げた。
「私は適切な割合だと思いますが? むしろ少ない方かと」
 ハッとした藤原は、恐る恐る四宮に、
「まさかと思いますが、かぐやさんは・・・・・・その」
「はい。だいぶ前に」
 生徒会室に激震が走った!

 ――ガタッ!
 
 中でも白銀の顔に滴る汗は尋常ではなかった。
「どえぇーっ!? かぐやさん。嘘、ですよね?」
「いえ。高校生にもなれば普通ですよね? 西園寺先生」
「・・・・・・そう、かもしれんな(俺は中学生の頃だったけど、皆意外と遅いんだな)」
 驚いた表情で四宮を見た西園寺がそう答えると、白銀と藤原が信じられないという表情を浮かべた。
「ちょっ、教師が居る空間でそういう話はやめた方が・・・・・・」
 チラチラと恥ずかしそうに西園寺を見る藤原と、絶望の表情で四宮を見る白銀。
「その反応、もしかして会長達はしたこと無いんですか」
「ぐっ、その気になれば俺はいつだって――」
「そうですか。会長は妹がいるんですから、妹とガンガンしてるかと思ってました」
「ははっ、それな」
 一瞬だけ静まった生徒会室。西園寺がチラッと白銀に視線を送ると、
「白銀、お前・・・・・・」
「してませんよ!?」
 西園寺が妙に息を荒くしている間に、四宮の爆弾発言が更に飛んだ。
「藤原さんも、ペスとしょっちゅうしてるでしょうに」
「ゴクリ・・・・・・。(ペスって確か、藤原の飼い犬だよな)」
「してません! せんせーも変な目で見ないでくださいッ」

 そこから暫くは、てんやわんやとカオスな事態が続くが、白銀がふと何かに気付いたかのように四宮を見る。
「なぁ、四宮。一応聞くが・・・・・・初体験がなにか分かっているのか?」
 四宮は、馬鹿にするなと溜め息を吐いて、
「キッスの事でしょう?」
 そして生徒会室は静寂に包まれ、白銀と藤原は気まずそうに四宮から目を逸らした!
 ただ一人無表情でピンクな妄想をしている西園寺は置いて、白銀が『初体験』の真実を伝えようとするが、藤原が止める。
「・・・・・・私が、教えます」
 周りに聞こえないよう四宮の耳の傍でヒソヒソと話す藤原。
 説明している藤原は、真っ赤になりながらも真実を伝えると、四宮も徐々に顔を赤く染め上げる。
「オ・・・・・・して、します・・・・・・中に、すると・・・・・・」

 ――数分後。下校のチャイムが鳴ると同時に、初体験の意味を理解した四宮。
「だってっ、そういうのは結婚してからって――」
 結婚してから、という言葉に西園寺は疑問を持つが、チャイムがなった為に書類を持って生徒会室を出て行った。
「もうっ、もうっ!」
 赤面し涙を流す四宮を見て、白銀は安心したようにホッと息を吐くが、些細な疑問が浮かび上がる。
「うん? (西園寺先生は意味を知ってた筈だよな? ・・・・・・まぁ、大人だし、おかしな話じゃないか)」

 こうして、四宮かぐや初体験勘違い事件は収まった。
 一人を除いて・・・・・・。
***

「では、お先に失礼します」
 帰宅する西園寺は、先程の事を思い返していた。

「(しかし、四宮がああいう話をするとは思わなかったな。まさか四宮も――自家発電してるなんて)」
 この変態は、勘違いをしていた。
「ふひっ。(藤原もまさかあんな特殊性癖を持っていたなんてな・・・・・・白銀も妹と一緒にシてるなんて、羨まけしからん)」

 西園寺金継という男は、四宮家を超える名家の出である。
 なので、四宮が男女の初体験を今日まで知らなかったというのと同じように、男女の合体事情を理解していない。
 ならば何故、この男は変態なのかと疑問が残る。

 幼い頃から西園寺家の長男として、厳しく育てられていた西園寺金継。
 両親の言いつけを守り正しく生活していたが、中学二年のある日に転機が訪れた。

 風呂に入った西園寺は、偶に自身の股間が異常に膨らむのに疑問をもっていた。
 何故、自分の象さんは大きくなるのだろう、と。
 考えても答えが分からない西園寺は、股間をピンッと弾いた。
『――あれ、なんか気持ちいい』
 瞬間、体に電気が迸った西園寺は本能の赴くままに、性の衝動に身を任せた。

 その日から、快楽を理解した西園寺は両親の目を掻い潜りながらも行為を続けた。
 ある時は自室。またある時は家の廊下でと・・・・・・。

 そんな風に中途半端な知識をつけた西園寺は、拗れに拗れて今の姿となった。
 本能のままに性を求める、この男。
 変態は変態でも、ピュア? な変態という、業の深い変態である。

「ふんふふーん。(今日はいい夜になりそうだ)」
 この変態が、これ以上の性知識を得ないように心から祈る。


 本日の勝敗結果『変態の勝利』この変態にオカズを与えてしまった為。