転生先はポケモン 23話

転生先はポケモン 23話

ハッピーエンドで締めたイーブイ


「行け、ソルガレオ!」
「来ないでぇっ!」
 ウルトラビーストの世界で、サトシとソルガレオは取り込まれたルザミーネを追い詰めていた。
「なんだ!?」
 逃げるルザミーネが止まり、足下から紫色の液体を噴出させる。
 危険な臭いがする液体に足を止めるサトシ達。
「ピッカ? ・・・・・・チャアッ」
「うえっ、毒なのか?」
 液体の臭いを嗅いだピカチュウが鼻を抑えて一歩下がる。
 近づけさせないと、液体を更に広く拡大し始めるルザミーネ。
「くっ、どうすれば・・・・・・」
 毒の沼を目の前にしたサトシは佇むが、諦める様子は無かった。
***
「バクガメス、ドラゴンテールッ。ガラガラ、って勝手に動くな! 援護を頼むバクフーンッ」
 カキは慣れない複数のポケモンバトルに苦戦していた。
「俺達の炎技があまり効いてないみたいだ・・・・・・どうするか」
 手をこまねいていると、ガラガラがカキに突撃する。
「ガラァッ」
「うぉ、っおい、何するんだ!」
 敵を無視して自分に攻撃するガラガラに訝しむが、操られた訳でも無く、その様子は弱気のパートナーを叱りつけているようだった。

「お前・・・・・・。そうだな、俺達の炎はアーカラ山の如く!」
 ガラガラの真意を理解したカキが敵のエンニュートを睨み付ける。
「もっとデカい炎で攻める。いつも通りにっ」
 エンニュートは危険を感じ取ったのか、様子見を止めてヘドロウェーブを放った。
「ガラガラッ」
 カキの呼び掛けに、ガラガラはフレアドライブで攻撃を止め、
「バクフーン、れんごくで閉じ込めてくれっ」
 激しい炎の渦が、エンニュートを包んで身動きを取れなくすると、カキとバクガメスは共に動く。
「行くぞっ、全身全霊・・・・・・」
 やけどを負いながらも抜け出したエンニュートに迫るのは、大火の暴力。

「ダイナミック、フル・・・・・・フレイム!」
 何処にも逃げられない程に巨大な炎。
 為す術も無く、エンニュートは呑まれ__。
***
 最も人数の多いこの場所では、有利にバトルが進んでいた、筈だった。

「もうっ、モクロー戻って来てよ!」
 ドレディアの甘い香りに誘われて、モクローはドレディアにベッタリと引っ付き、マオ達は安易に攻撃が出来ない状況に陥っていた。
「そうだっ、アママイコがドレディア以上に甘い香りを出せば戻ってくるんじゃない?」
 マーマネの提案に頷いたマオは、アママイコに目を向ける。
「やってみる。アママイコ、甘い香りだよっ」
 目に見える程にピンク色な甘い匂いが辺りに広がると、気付いたモクローが発生源であるアママイコにフラフラと飛び移る。
「やったっ。成功だ__」
「ドーレディーッ」
 しかしドレディアも自分の盾を取り返すように甘い香りを出してモクローを引き寄せる。
「あぁっ、モクローがまたっ。アママイコ、負けないで!」
 アママイコとドレディアの間で往復するモクロー。
「埒が明かない」
 止まった戦況に、スイレンはマリルリとアシマリを前に出させる。
「アシマリ、モクローをバルーンで包んでっ」
 バルーンの中に閉じ込められたモクローは、匂いが遮断されて目を覚ました。
「マリルリ、アクアジェット!」
「ドレディッ」
 効果は今ひとつなのに、ドレディアはかなりのダメージを負った様子を見せる。
「はらだいこで威力を上げておいた」
 ドヤ顔をしながら右手を挙げて敬礼するスイレンに、マオ達は『おおっ』と拍手喝采。
『ドレディアがソーラービームの発射態勢に入ってるロトッ』
 ロトムの警告に皆が慌てて指示を出すが、
「レーディーッ」
「うそっ、早くない!?」
 ウルトラビーストに影響されているせいなのか、個体や技の強化がされて、本来はまだ時間の掛かるソーラービームが放たれる。
「間に合わ__」
 マオが恐怖で目を瞑る直前、巨体が立ち塞がるのが見えた。

「あれ、なんとも・・・・・・バンギラスッ」
 目を開けた皆は、自分たちを守ってくれたバンギラスに駆け寄る。
「バ、ン・・・・・・グゥッ」
 いくら練度の高いユウキのポケモンと言えど、未知の力で強化された弱点の技を食らったバンギラスは膝をつく。
「バンギラス・・・・・・ありがとう」
 労うよう撫でたマオは、皆と顔を合わせて頷き合う。
「アママイコ、マジカルリーフっ」
「アシマリ、マリルリ、ダブルアクアジェット!」
「トケデマル、びりびりちくちくッ」
 しかしドレディアへの攻撃は、ムウマージとミロカロスにかき消される。
「まだまだっ。ライコウ、十万ボルト!」
 マーマネの指示で飛ぶ電撃がミロカロスに当たると、瀕死になったのか目を回した。
 すかさずスイレンがアシマリと動きを合わせて、技を放つ。
「届け、水平線の彼方まで! スーパーアクアトルネードッ」
 放たれたZ技がドレディアを瀕死にさせ、残ったムウマージが向かってくる。
「お願い、バンギラスッ」
 マオが自信満々に、迫るムウマージに指を指すと、
「かみくだくッ」
「ガァッ」
 渾身の一撃。効果抜群。三対の敵ポケモンが倒れて、三人は笑顔でハイタッチを交わす。
「やったねっ」
「うんっ」
「僕達の勝ちだぁ!」
 勝利を喜ぶマオ達だが、ポケモン達はまだ警戒を解いていない。
「あれ、ニャビーどうしたの?」
 目を回して倒れているドレディア達を、牙を剥き出しにして威嚇するニャビー。
 その視線の先には__。
***
「速攻で片を付けるっ」
 グラジオはメモリを取り出してシルヴァディに投げた。
「ファイトメモリを受け入れ、闘争心を滾らせろ!」
 格闘タイプになったシルヴァディが、オーラを纏う。
「マルチアタックッ」
 アブソルにとって天敵の格闘攻撃が当たり、後ろに吹き飛ぶ。
 しかしまだ敵意を残して立っていた。
「強いな。ウルトラビーストの影響か?」
 アブソルの角から刃状攻撃が飛ぶと、ブラッキーを前に出す。
「サイコカッターかっ。悪の波動で防げ!」
 隙が出来た相手に、グラジオは大技を放つ準備を始めた。
「蒼き月のZを浴びし岩塊が今、滅びゆく世界を封印する!」
 ルガルガンは高く跳び上がると、右手を上に翳す。
「これで終わりだ!」
 ルガルガンの手の上に岩の塊が積み重なり、グラジオ達を大きな影で覆い尽くす。
「ワールズエンドフォールッ」
 アブソルは悪あがきで巨大な岩塊にサイコカッターをぶつけるが、ビクともしない。

 そのまま地面に衝突して土煙が起こると、グラジオは勝利を確信して母親の元へ急ごうとする。
「よし。シルヴァディ、行く__ストーンエッジ!」
 その場を離れようとしたグラジオが、突如ルガルガンに攻撃を指示する。
「何故だ・・・・・・。確実に倒した筈だッ」
 煙が晴れると、アブソルは先ほどよりも目付きを鋭くさせて立っていた。
***
「なんで、倒したよね!?」
 マオが叫ぶ。その理由は、
「今までの攻撃、効いてなかったのかな」
「いや、確実に効果抜群だったよっ」

 ドレディア、ミロカロスにムウマージは、不気味に立ち上がりマオ達にゆっくりと迫る。
***
「本気の炎だぞ・・・・・・。なんでまだ立っている」
 エンニュートは素早く迫り、ドラゴンテールを振りかざす。
「躱せっ」
 辛うじて躱したが、岩柱をも巻き込んだ攻撃に一歩退く。

「俺達の炎は決して消えないっ。行くぞ!」
 まるで不死身のポケモンが、カキ達に毒牙を向けた。
***
 何度倒しても立ち上がるアブソルを見て、グラジオはルザミーネが逃げた方向を見つめる。
「そうか・・・・・・。本体を倒さないと終わりは来ない、か」
 シルヴァディに乗ったグラジオは、アブソルを無視して走り出す。
 しかし、この場から逃がさないと、サイコカッターが放たれるが、
「ブラッキー、ルガルガン。此処は任せる!」
 了解したと、アブソルの攻撃を止めるブラッキー達。
「早く母さんの元へっ」
 思いに応えたシルヴァディは、速度を上げて不安定な地面を駆けだす。
***

「リーリエのママ! リーリエとグラジオは直ぐ近くまで来てるんだっ」
「もう帰ってってば!」
 毒の沼に立ち尽くすサトシはルザミーネに説得を試みるが、反応は変わらないどころか、更に毒をまき散らす。
「うおっ、とっと」
 毒にかかる所だったサトシを、ソルガレオは口で持ち上げて避難させる。
「ありがとう、ソルガレオ」
 サトシを背に乗せたソルガレオは、毒の沼に入り駆けだしていく。
「えっ、平気なのか!?」
 ソルガレオは鋼タイプを持ってるので毒は効かない。それを知らないサトシが一瞬驚くも、直ぐに構える。
「いやぁっ」
 近づいてくるサトシ達に毒を飛ばすルザミーネ。
「行くぞピカチュウッ」
 毒の沼を抜けて、ソルガレオから飛び降りたサトシはピカチュウと共にルザミーネへと走る。
「ピカチュウ、攻撃して引きつけてくれ。その間に俺がリーリエのママを引っ張り出す!」
 ピカチュウの十万ボルトが囮となり、その間にサトシがルザミーネを取り込んでいるウルトラビーストに飛びつく。
「ぐぁっ」
 しかしルザミーネは引っ張り出せず、触手で弾き落とされる。
「大丈夫だ。ピカチュウ、もう一度!」
 心配して来たピカチュウに声を掛けて、同じ作戦で挑戦するサトシ。

 きっとユウキは『やはりスーパーマサラ人か』と呟くが、普通に見たらトレーナーが直接戦うという有り得ない行動。
「はぁ、はぁ・・・・・・。もう一度」
「チャア・・・・・・」
 成功の望みは薄いが今はこれしか思いつかないと、サトシは立ち上がり、ピカチュウは止めるようにサトシの顔を見上げる。

「サトシーッ」
 と、そこで後ろから聞こえる声。
「リーリエ、グラジオ!」
 シルヴァディに乗った二人に、ピクシー達がサトシの元へと近づいてくるのが見える。
「サトシ! そのウルトラビーストを倒さないと母さんのポケモン達は何度も蘇るッ」
「えっ、このままじゃ戦っている皆が・・・・・・」
 サトシが焦って顔を難しくしていると、ソルガレオが引き返していく。
「行ってくれるのか!?」
 チラリと一度サトシを見たソルガレオは、任せろと言わんばかりに速度を上げる。
「ルガルガン、ラティアスも一緒に頼むッ」
 ソルガレオを追って、ラティアス達も皆の救援へと向かう。

「お母様、今行きます!」
「待ってリーリエ、そこの沼は危ないッ」
 警告を飛ばしたサトシに首を振ると、リーリエはピクシーに抱えられて毒の沼へと踏み入る。
「大丈夫です。ピクシーの特性、マジックガードで平気ですから」
 リーリエに続き、グラジオもシルヴァディにメモリを渡して沼を渡る。
「俺達も行くぞ。鋼の獣となれ、シルヴァディッ」
 
 サトシの元へと着いたリーリエとグラジオは、浮かんでいる母親を見上げる。
「・・・・・・お母様」
「ウルトラビーストを倒すため、シルヴァディを鍛えてきた。今こそ力を示す時!」
「シヴァッ」
 グラジオの宣言に同調して叫びを上げるシルヴァディ。
 しかし、ルザミーネは戦う意思は無いのか、触手の先から岩を創り上げて逃げる。
「またっ」
「逃げるのですかっ」
「あなた達が追いかけて来るからでしょうッ」
 塔のように造り上げた岩の天辺から叫ぶルザミーネに、リーリエは表情を厳しくして歩く。
「お母様。逃げないでください」
「来ないでよッ」
 岩の塔を登り始めたリーリエにサトシとグラジオは慌てて止めようとするが、
「わたくし、言いたい事があるんです。任せてくれませんか?」
 自分を止めようとするサトシ達に頼むと、グラジオは溜め息を吐きながらも頷いた。
「危なくなったら止めるぞ」
「あぁ」
 ルザミーネへと近づくリーリエを心配しながらも、期待の視線を送るグラジオ。

 塔を登り切ったリーリエだったが、岩肌で傷つき服がボロボロ。顔も土で汚れて、息が上がっていた。
「はぁ、ふぅ・・・・・・」
 それでも、リーリエの表情は暗くなる事無く、自らの母親を睨み付けた。
「お母様なんて__大っ嫌い!」
「__っ!」
 リーリエの罵倒に、ルザミーネの眉が一瞬だけピクリと動いた。
「いつもいつも、わたくしのことを赤ちゃん扱いするくせに。これではお母様の方がずっとわがままな赤ちゃんじゃありませんかっ」
 今まで苦しげな表情のルザミーネの顔に、戸惑いが生まれる。
「今のお母様は本当のお母様じゃない。長い間、ウルトラビーストの研究も続けてきた。お母様はとても強い人・・・・・・」
 操られているルザミーネは、聴き入るよう顔を俯かせた。
「なのに今は、自分一人で動く事が出来ない操り人形。・・・・・・お願い、出てきて」
 姿が見えないが、下でリーリエの成功を信じているサトシ達は固唾を呑む。
「わたくしのお母様なら、自分の力で出てこられる筈です__」
 一歩踏み出し、手を差し伸べたリーリエは、涙を浮かべながらも叫ぶ。

「論理的結論として!」
 その時、虚ろだったルザミーネの目に光が戻る。
「リー、リエ・・・・・・?」
 自分の娘に手を伸ばすルザミーネ、だが__。
「お母様ッ」
 正気を取り戻したルザミーネは、ウルトラビーストの触手で体の奥へと押し込まれて、姿が見えなくなった。
 体を更に黒く肥大化させたウルトラビーストは、触手をリーリエへと伸ばす。
「リーリエッ」
 叫びを聞いたグラジオ達が触手で掴まれる寸前に、リーリエをシルヴァディの背に乗せる。
「母さん・・・・・・。クソっ、なんて奴だ」
 ウルトラビーストは、またもや岩を創り上げると自分の周りを覆う。
『Ahaー!』
「なんだっ?」
 奇妙な鳴き声を上げたウルトラビーストに警戒するサトシ達。
 その行動の意味は・・・・・・。
「って、なんかいっぱい来てる!」
「仲間を呼んだのかっ」
 周りから沢山のウルトラビーストが、ふよふよと浮いて近づいてくる。
「そんな、きゃっ」
 大群が来る中、本体の黒いウルトラビーストが岩を飛ばし、自らを覆う岩に鋭い鉤爪を生やして要塞を造る。
「なんで閉じ籠もるんだ?」
「母さんを離したくないんだろう」
 疑問に答えたグラジオに、サトシは視線を向ける。
「母さんが奴を知りたいと願ったように、奴も母さんを・・・・・・いや、人間を知ろうとしているのかもしれない」
 触れただけで傷つく要塞に、手出しが出来ず目付きを鋭くするグラジオ。
「そうだ、一緒にZ技を撃とう!」
 サトシに提案にグラジオが首を振る。
「さっき使ってしまった。それに、あのウルトラビースト達をどうにかしなければ」
「そっか・・・・・・。どうしよう」
 三人はこの状況に頭を抱えるが、敵は待ってくれない。
「来ますっ」
「くっ、シルヴァディッ」
「ピカチュウッ」
 まずは津波のように押し寄せるウルトラビーストを倒そうとするが、
「数が・・・・・・多すぎます」
 押し潰されないよう遠距離から技を放つも、一向に減らない。
「こうなったらZ技で__」
 せめてこの脅威だけでもと、サトシがZリングに触れた時。

「まぁ、待てよ。今はまだ取っとけ」
「えっ?」

 サトシ達の後ろから声が聞こえて後ろを振り向くが、見えたのは翠玉色の残像のみ。
 気のせいかと、前に顔を戻すと__。

「はかいこうせん」
 其処には、エメラルドに輝く龍を従えたユウキが立っていた。
***
 全てを破壊する光線を横に薙ぎ払い、ウルトラビーストの大群を吹き飛ばした。
 ふぅ。これで一先ず安心だな。
「ユウキッ」
「おぉ、サトシ。とりあえず倒したが、どういう状況?」
「えーっと、リーリエのママが取り込まれて岩になって閉じ籠もって__」
 なるほど。わからん。
 こめかみを抑えてグラジオ達を見ると、意図を汲んでくれたのか手短に話してくれた。
「あの要塞のような岩の中に、母さんがいる」
「でもZ技くらいの威力じゃないと壊せないんです」
 確かに、破壊光線を当てても崩れなかった。
「壊しても本体を倒さなければならない。・・・・・・俺はもうZ技を撃ってしまったんだ」
 そうか、今Z技を使えるのはサトシと、
「分かった。岩の破壊は任せろ」
「なに?」
 訝しむグラジオの前に出て、少し離れながらもサトシの横に立つ。
「あっ、そうか。ユウキは」
 サトシの言葉に頷き、Zリングを掲げる。
 いつもと違い、そのリングは天色に輝くクリスタルを着けている。
「あれは、ドラゴンZかっ」
「ということは・・・・・・」
 グラジオとリーリエは、俺のポケモンを見上げる。

「やるぞ・・・・・・。《《レックウザ》》!」
「グルルッ」
 想いに同調し唸る、最後の切り札。
「俺達もだっ、ピカチュウ!」
 サトシの方をチラリと見ると、Zリングが光っていた。
「うわわっ。・・・・・・クリスタルが変わった? よしっ」
 え、何ソレ? 電気Zじゃないの?
「俺達の全力をぶつけようっ」
「ピッピカピッ」
 サトシとピカチュウがハイタッチを交わし、その衝撃で落ちた帽子をピカチュウが被る。
「準備はいいか? 行くぞッ」
 レックウザは俺を中心に蜷局を巻き、力を溜める。
 ドラゴンZの動きは分からない筈なのに、体が勝手に動く。
「これが__」
「俺達の__」
『超、全力・・・・・・だぁッ』

 レックウザは天に昇るよう飛び上がり、ピカチュウは大量の電気を周りに帯電させる。

「アルティメットドラゴンバーン!」
「1000万ボルト!」

 巨大な龍の幻影が岩の要塞を崩し、姿が露わになったウルトラビーストに、七色の電撃が降り注ぐ。

 __ドォンッ。

 一瞬の無音が過ぎ、爆音が響く。
 いや、大丈夫? 死んでない?
 予想以上の攻撃に、取り込まれているルザミーネさんを心配していると、巨大な電撃の柱が消える。
「やったか?」
 待て、それはフラグだ。とはならず、
「お母様ッ」
 ウルトラビーストは地面に倒れ伏せ、ルザミーネさんの腕が飛び出しているのが見えた。
「母さんっ、今引っ張りだす!」
 俺も手伝って腕を引っ張ると、ズルリとルザミーネさんの体が出てきた。
「目を開けて、お母様!」
 ルザミーネさんの顔に付着している黒い液体を拭って、体を抱えるリーリエ。
「大丈夫かな。リーリエのママ」
「まぁ今は見守って__っ」
 少し離れて後ろからサトシと共に無事を願っていると、ルザミーネさんを取り込んでいたウルトラビーストが起き上がる。
「レックウザッ」
 警戒してレックウザをリーリエ達の傍に行かせるが、
「あれ、逃げてく」
 サトシが呆気ないと言うよう目を見開く。
「どうするか」
 追いかけて倒すべきか考えていると、リーリエ達の様子が変わった。

「お母様? お母様ッ」
「リー、リエ・・・・・・」
「母さん!」
 弱々しく目を開けたルザミーネさんが立ち上がろうとするが、体勢を崩して転びそうになる。
「っ、ふぅ。無理はするな」
 すかさずグラジオが肩を組み支えると、反対側にリーリエも立つ。
「・・・・・・悪い、夢を見ていたようだったわ。でも」
 俯かせていた顔を上げたルザミーネさんは、微笑を浮かべる。
「あなた達の声が聞こえたの。・・・・・・ありがとう。リーリエ、グラジオ」
「お母、様・・・・・・」
 ここまで色んな感情を溜めていたリーリエは、堪えきれずに涙を流す。グラジオも泣いているのか、顔を背けた。

『おーい!』
 やっと終わったと、大きくグッと背を伸ばしていたら、遠くから皆が走ってくるのが見えた。

「ふぅ。突然ドレディア達の動きが止まったから驚いたよ」
「エンニュートがすっかり怯えてるんだが、どうすればいい」
「てかレックウザがいるんですけど何事?」
「どうせユウキのポケモン。もう驚かない」

 親子の感動ムードが一瞬で消え失せ、和気あいあいとした空気が流れる。

「じゃあ、帰るとするか」
 集合した皆にそう声を掛けると、全員片手を上に突き出して、
『おーっ!』

 まるで疲れを感じさせない声で、返事を返してくれた。