転生先はポケモン 19話

転生先はポケモン 19話

 トラウマを克服しよウツロイド

 ポケモンスクールでの、いつもの朝。
 だけどリーリエの様子は、いつもと違っていた。

「リーリエ・・・・・・」
 心配そうなマオはリーリエに声を掛けるが、
「ごめん、なさい」
 口を開けば謝るだけ。
「焦らなくてもいいんだ」
 もう見ていられなくて俺も声を掛けると、スイレン達もリーリエを慰める。
「そうそう。絶対また触れるよ」
「がんばリーリエ、だよ!」
「マオ、それ良いなっ」
『がんばリーリエっ』
 サトシ達も声を揃えて言うとリーリエは微笑み、席を立った。
「そう、ですよね。そうですっ。シロン、試させてっ」
 そう言ったリーリエは、腕を前に出して、シロンを受け入れる準備をする。
「コーンッ」
 充分に助走をつけて、リーリエの胸に飛び込んだシロンだったが__。
「ひ、ひぅっ」
 やはりまだ駄目なのか、リーリエは硬直してしまった。
「まぁでも、ナイスファイトだな」
 胸に引っ付いたシロンを剥がして抱える。
「まだ諦めませんっ」
 リーリエは放課後まで色んな方法でシロンにチャレンジを始めたのだった。
***

 放課後、家に帰ろうと歩いているとリーリエを見かけた。
「あれ、車の迎えは来ないのか?」
 リーリエは首を振り、隣を歩くシロンを見る。
「今日はシロンと散歩をしながら、歩いて帰ろうかと」
「そっか。俺も着いて行っていいか?」
「もちろんです」
 
 そうして一緒に歩いていると、リーリエは突然に、
「あの時見たポケモン・・・・・・、やっぱり見た事あるような」
 シルヴァディか? グラジオはリーリエの事を助けたと言っていたが、何かを思い出しかけているのだろうか。
「思い、出してみるか?」
「え?」
 リーリエには酷な事だが、全てを思い出せばポケモンに触れない事を解決出来ると思う。
「もちろん、強制するつもりは無いよ。でも、このままだとシロンに触れない事が暫く続く」
 心が痛むが、挑発するように言うとリーリエは俯いてしまった。
「あ、いやっ。その」
 言い過ぎたかな? 今の俺、すげー嫌な奴だ・・・・・・。
「・・・・・・す」
「え?」
 いや、怒らせてしまったか?
「思い出します」
 俺の顔を見て、ハッキリと言う姿に少し驚いてしまった。
「知りたいんです。わたくしがポケモンに触れなくなった理由は、きっと何かあるっ」
「そ、そうか」
 リーリエの覚悟を聞いて、リュックの中のこすもを起こす。

「こすも、頼みがあるんだが。ポケマメあげるから」
 厳しい事を言ってしまった為、リーリエとの気まずい時間が苦しい。
「・・・・・・ユウキ」
「なんだ?」
 こすもにリーリエの考えを読み取ってテレポートをして欲しいと頼んでいると、
「ありがとうございます」
 テレポートで消える直前、笑顔でそう言われた。
***

 目を開けると、浜辺に立っていた。
「此処は、お母様達とよく遊びに来ていた浜辺です」
 懐かしそうにしながら海に目線を向けるリーリエ。
 その目はきっと、楽しそうに遊ぶ子供の頃を思い描いてる。
『それそれーっ』
『おにいさま、ナマコブシをもってくるのやめてくださいっ』
 __次に来たのは、少し埃被ったポケモン達の縫いぐるみが置いてある小さな部屋。
「私とお兄様の子供部屋だった所ですね」
 リーリエは、置いてあるピッピの人形を抱いて微笑む。
『わたくし、そのピッピであそびたいです」
『じゃあ、ぼくはこのゲンガーにするよ』
 __次は俺も事故で来た事がある、ルザミーネさんの部屋だった。
「こんなに、写真が」
 家族三人で、色んな場所に行ったと分かる写真が沢山飾ってある。
「お母様・・・・・・」
 写真立てを一つ取り上げるリーリエ。
 ルザミーネさんの想いが少しでも伝わったのか、嬉しそうだ。
「どうだ、少しは思い出したか?」
「いえ、まだ・・・・・・」
 リーリエが首を振った時、またテレポートが発動する。

「ここは、エーテル財団?」
 俺もリーリエも疑問になったが、見た事がある場所だった。
「何故、でしょうか。知っている気がします」
 奥に進むと、異様な雰囲気を出す空間に出た。
「地下ってリーリエ、来た事あるのか?」
「ハッキリとは・・・・・・。でも確かに此処も知って__」
 その時、俺の体が宙に浮き始める。
「なんだっ? っ、グハッ」
 戸惑ってると、壁に叩きつけられた。
「ユウキッ。離して、ザオボーッ」
「リーリエ嬢ちゃんは大人しく着いてきて下さいっ」
 突然現れたザオボーは、リーリエを引き摺って行ってしまう。
「っ、待て!」
 動きが鈍くなった体を必死に動かして追いかけると、ザオボーはスリーパーをリーリエに差し向けていた。
「スリーパー、催眠術です。悪く思わない下さいよ。思い出されると困るんです」
 なんだと。リーリエが忘れていたのは恐怖のせいじゃないのか?
「させるかっ。出てこい、バクフーンッ」
 バクフーンにスリーパーを止めさせようとするが、
「甘いんですよ。フーディン、サイコキネシス」
 近くの物陰に隠れていたフーディンに不意を突かれて、また宙に浮かされてしまう。
「しまっ、た。ぐぅっ」
 リーリエもフーディンに浮かされ、固定されて動けなくなった俺達。
 その時__。

「いでよ、シルヴァディッ」
 グラジオとルザミーネさんが現れた。
「リーリエッ。ザオボー、貴方は一体何をしているのっ」
 怒りを表すルザミーネさんの横で、グラジオはシルヴァディに指示を出す。
「リーリエを助けるんだっ」
「グルゥッ・・・・・・。シヴァーッ」
 シルヴァディは雄叫びを出すと、被っていた仮面を砕き割る。
 そして、リーリエに向かって跳んで__。

「い、いやぁーっ」
 向かってくるシルヴァディに怯えて、叫ぶリーリエ。
 しかしシルヴァディは行動を止める事無く、リーリエの後ろで捕らえていたフーディンを吹き飛ばす。
「えっ、今のは・・・・・・」
 一瞬すれ違ったシルヴァディに既視感を感じたのか、リーリエは後ろを振り向く。
「思い出しました。あの時__」
 シルヴァディもリーリエを見つめ返す。
「あの時も、こうして助けてくれた」
 どうやらリーリエは過去の事を思い出したみたいだ。
「バクフーン、スリーパーに電光石火だっ」
 フーディンがシルヴァディに倒されたお陰で、動けるようになったバクフーンに指示を出す。
「今ここに甦りし、聖獣シルヴァディ。ダークメモリーを受け入れ悪の魔獣となりて暴れよっ」
 バクフーンの攻撃で隙が出来たスリーパーに対して、グラジオはシルヴァディに何かを投げつけた。
「マルチアタックーッ」
 あれは、シルヴァディの専用技か?
 黒いオーラを纏ってスリーパーに突撃するシルヴァディ。
「な、なんですとぉーっ」
 どうやら効果抜群の悪タイプに変化させたみたいだ。
 アルセウスみたいで面白いな。
「リーリエッ」
 ザオボーのポケモン達が引っ込み、ルザミーネさんがリーリエに駆け寄る。
「ごめんね、リーリエ。ごめん、ごめんなさい・・・・・・」
 泣きながら謝るルザミーネさんに、リーリエは抱きしめて答える。
「いいんです、お母様。・・・・・・わたくしも、謝らないと」
 そう言ったリーリエは立ち上がり、シルヴァディと向き合う。
「忘れてしまって、ごめんなさい。あの時も、今も。助けてくれたのは、あなたでしたのに」
 シルヴァディに歩き寄ったリーリエは__。
「いいえ。謝るのでは無く・・・・・・、ありがとう。ですよね、シルヴァディ」
 シルヴァディの頭を撫でた。
「リーリエ、貴女っ」
 ルザミーネさんは、そんなリーリエを驚き見る。
「えっ、わたくし。・・・・・・シロンッ」
 リーリエは今朝と同じく、両腕を開くと、
「良かった・・・・・・。またシロンを抱きしめられたっ」
「コンッ」
 そこで、こすもとバクフーンがリーリエに近寄った。
「大丈夫ですっ。小さな頃と同じく、ポケモンに触れます!」
 こすも達を抱き寄せるリーリエ。
 俺とグラジオは、そんなリーリエを見ると、嬉しくて笑い合った。
***

 次の日、教室にてリーリエは皆のポケモン達の前に立っていた。
「リーリエ、本当に大丈夫なの?」
「少し心配」
 マオ達が心配するが、リーリエは両手を突き出した。
「大丈夫です。おいでっ、アママイコにアシマリッ」
 呼ばれたポケモン達はリーリエに恐る恐る近づき、
「かわいーっ」
 思いっきり抱きしめられたアママイコ達は一瞬驚いたが、嬉しそうに抱きしめ返す。
「ニャビーも、お髭が気持ちいいーっ」
 まだまだ足りないのか、教室を歩いていたニャビーを捕まえて頬ずりをするリーリエ。
「リーリエ。本当に大丈夫なんだ、良かったね」
 マーマネ達は嬉しそうに微笑み、カキもバクガメスを出した。
「ほら、お前も行ってこい」
 バクガメスはリーリエに抱きしめられるが、
「バクガメスって、大きくて堅いんですねーっ。あれ?」
「あっ、そこは__」
 カキが気付き止めようとするが、時既に遅し。辺りは眩い光に包まれて__。
『・・・・・・ゲホッ』
 甲羅に触れてしまい、シェルトラップが発動してしまった。
「ふふっ、あはは」
 真っ黒になった俺達だが、リーリエは嬉しそうだ。

「皆、アローラ。今日もスパーキングギガボルトで痺れる授業を始めるぞー」
 そこでククイ博士がやって来て、今日の授業が始まる。
『はーいっ』

 昨日の事件で、ザオボーがいつの間にか消えてしまって不安を感じる。
 懲りていると思わない。きっと、また近いうちに現れるだろう。
 次こそは、リーリエを危険な目に遭わせない。
「ふふっ。ピカチュウの毛並みサラサラー」

 ポケモン達とはしゃぐリーリエを眺めながら、そう思った。