転生先はポケモン 16話

転生先はポケモン 16話

 カントーに向かってとんぼがえり 後編

 今日はハナダジムでジム戦体験だ。
 バスで向かっている時に、ハナダの美人三姉妹は旅行に行っていると聞いて、俺の胃痛の負担は減った。

 ジムに着くと、ククイ博士はカスミ達を俺達の前に立たせたる。
「改めて、ハナダジムのジムリーダーで水ポケモンの使い手、カスミ。そして、ニビジムの元ジムリーダーで、岩タイプの使い手のタケシだ」
『よろしく!』
 カスミ達は懐からあるモノを取り出した。
「カントーのトレーナーは、ジムを巡ってジムリーダーとバトルする。そのバトルに勝つと、ジムバッジが貰えるんだ」
 カスミとタケシが見せたのは、ジムバッジ。
「ハナダジムは、このブルーバッジ」
「そしてこれが、ニビジムの勝利の証、グレーバッジだ」
 あぁ、懐かしいな。カントーのバッジはシンプルでいい。
「サトシとユウキは、バッジを全部集めたのか?」
 カキの疑問に、サトシはドヤ顔を浮かべて胸を張る。
「まぁね。八個全部ゲットだぜっ」
 しかし、サトシの言葉にカスミとタケシは苦笑を漏らしてからかう。

「ユウキはともかく。サトシの場合、あたし達のはお情けバッジだけどねー」
「確かに、そんな事もあったなぁ」
 心当たりがあったのか、サトシは後ずさり、笑って誤魔化す。
「あ、あはは。あっ、バッジを全部集めると、ポケモンリーグに挑戦出来るんだぜっ」
「ポケモンリーグ?」
 マオの疑問に、サトシは調子を取り戻して、得意げに語る。
「あぁっ。強いトレーナーが集まる、ポケモンバトルの大会だよ」
「というか、皆はユウキが各地方リーグの優勝者って事は知らないの?」
 カスミの指摘に、アローラ組は仰天する。
「え、ユウキってもしかして有名人?」
「わたくし、知りませんでした」
 スイレン達が知らないのも無理は無い。隠しているからな。
「有名人だな。色々な意味で」
 ああぁっ、止めろタケシ。調子に乗っていた俺の黒歴史が。
「そーねー、一体で無双したり、伝説のポケモンを出したり」
「んんっ。カスミ、それよりジム戦の体験を始めようか」
 これ以上、俺の羞恥心が刺激されないように話しをすり替える。
 なお、伝説のポケモンを出した事に後悔は無い。
 俺のポリシーに反するが、相手がダークライで害悪コンボしてきたからな。決して、それで弟を嬲った事をキレた訳では無い。

「それじゃ、まずは誰からやろっか」
『はいっ』
 待ちきれないのか、全員が手を挙げる。
「あー、待って待って。じゃあ、こうしよっか」
***
 広いフィールドに、四人の女子が降り立つ。
「ジムリーダーとは言え、三対一なんて大丈夫かなぁ」
 マオが心配するのは、スイレン、リーリエと共にカスミと戦うこの状況。
 だが、カスミは余裕を崩さない。
「あんまり舐めないでね。あたし、強いから。ねっ、ユウキ」
 えっ、なんで俺に振るの?
『へぇ、じゃあ遠慮無く』
 えっ、急にアローラ女子達が豹変したんだけど。怖い。

「誰が真のヒロインか教えてあげるっ」
 カスミはコダックを出して、手招きをする。
「アママイコ、マジカルリーフッ」
「アシマリ、バブル光線っ」
「シロン、こなゆきっ」
『三位一体っ』
 えぇ、バトル経験少ない筈なのに、なにこのコンビネーション。
 コダックは技をもろに受けて吹き飛ぶが、戦闘不能に至らずに体制を立て直す。
「コダック、水鉄砲よっ」
 勢いよく発射される水鉄砲だが、
「アシマリ、バルーンで受け止めてっ」
 前に出たアシマリは、バルーンで水鉄砲を包み込む。
「へぇ、面白いじゃない。それからどうするのかしら」
「こうだよ。アシマリ、コダックに飛ばして!」
 バルーンにぶつかったコダックは、中に閉じ込められてしまった。
「シロン、こなゆきで凍らせてっ」
「そこでマジカルリーフ!」
 表面が凍ったバルーンを、アママイコの攻撃で砕き割る。
 いや、ホントになんでこんな息ぴったりなんだよ。
「コダッ、コー」
 頭から地面に落ちたコダックは、辺りを転げ回る。
「勝負はここからよ。そうでしょう、コダックッ」
 カスミの発破に、コダックは目を怪しく光らせて応える。
「ねんりきよっ」
 あぁ、あの状態のコダックが出たら勝負は決まったか。
 コダックのねんりきで、宙に浮かされたアシマリ達は必死に抵抗するが、身動きが取れない。
「勝負あり、かな」
 審判のタケシが判定を下し、この勝負はカスミの勝利で終わった。
「三対一だったのに、負けてしまいましたね」
「でも貴女たち、バトルセンスあるわよ」
 リーリエ達は悔しそうにするが、カスミは健闘を称える。
「それじゃあ次は、俺達だな」

 今度はタケシとの勝負。
「やるのは、俺とカキとマーマネだな」
 サトシはルガルガンを出して準備する。
「遠慮はいらないぞ、来いっ」
 イシツブテを場に出したタケシは、腕を組んで構えた。
「それじゃ、早速。トケデマル、びりびりちくちくっ」
 イシツブテに攻撃が当たるが、ビクともしない。
「なんでっ、どうしてっ。イシツブテはいわ・でんきタイプ、電気技は効くはずだよ!?」
「マーマネ、それはアローラのイシツブテだ。カントーのは、いわ・じめんタイプで効かないぞっ」
 サトシがそう言う。・・・・・・えっ、サトシ? サトシがタイプ相性を覚えてるだとっ!?
 衝撃な事実に目を見開いている俺を置いて、勝負は続く。
「なら、バクガメス、ドラゴンテールだっ」
 バクガメスが縦回転で勢いよくイシツブテに接触する。
「イシツブテ、コッチも回れ、ジャイロボールだっ」
 横回転し始めたイシツブテとバクガメスがぶつかる。
「ジャイロボールって、攻撃技だよね?」
 マーマネは、自分の知らない戦法に苦笑いする。
「どこぞのチャレンジャーを参考にしたんだ」
 あぁ、サトシな。分かるよ、うちの弟は型破りだからな。
「? ルガルガン、かみつくだっ」
 自分の事だと思っていないサトシは、ルガルガンに指示を出して続行する。
「かたくなるっ」
 イシツブテにかみついたルガルガンは、堅くなった体に返り討ちにされて、涙目でサトシの元に戻る。
「あー、勝負ありかしら?」
 審判のカスミが判定を下す。
 あくまでジム体験なので、ここで終了。タケシの勝利で終わった。
***
「ところで、ユウキはやらないの?」
 マオが首を傾げて効いてくるが、俺はやるつもりは無い。
「そーねー、あたしも久々にバトルしたいと思ってたのよ」
「もちろん、俺もだ」
 カスミとタケシが、挑発するようにモンスターボールを突き出してくる。
「ユウキ、ジム戦というモノを見せてやってくれないか?」
 ククイ博士がそう言うが、確かにアローラにジム戦は無いからな。
「わかった。対戦形式は?」
 渋々ながらも了承すると、カスミはジムのフィールドを変形させた。
「あたしとタケシで、二対二のダブルバトルよっ」
 岩だらけだったフィールドに水が注ぎ込まれて、水と地面が半々になる。
「ダブルスはいいが、流石にジムリーダークラス二人を相手にするのはな・・・・・・」
 頭を掻きながらぼやくと、サトシが割り込んでくる。
「じゃあ、俺も出るぜっ。へへっ、このダブルバトル久しぶりだなぁ」
 確かに、一緒に旅をしてた以来か。
「よし、行くぞっ。ハガネール!」
「出番よ、ギャラドスッ」
 タケシ達がポケモンを出すが、あの選出は本気だな。
「それなら、出てこい。ラティアス」
「フゥーンッ」
 久しぶりにバトルの出番が来たので、ラティアスの気分は高揚しているみたいだ。
「あら、いいの? その子だして」
 カスミ達は、俺が手持ちをあまり明かさない事を知っているので聞いてくるが、
「まぁ、ここに居る皆は知ってるし。何よりもカスミ達を相手に手加減は出来ないんだ」
「あぁっ、本気で勝ちに行くぜっ。ピカチュウッ」
 準備が整った所で、審判のククイ博士が手を振りかざす。
「では、始めっ」

 開始の合図が出た瞬間に、ポケモン達に指示を出す。
「ラティアス、目覚めるパワーだっ」
「ピカチュウ、十万ボルトっ」
 球状のエネルギーと迸る電撃が、相手のポケモンに向かうが__。
「ハガネール、ジャイロボールで目覚めるパワーを弾き飛ばせっ」
「ギャラドスはハイドロポンプで十万ボルトを相殺よっ」
 やっぱり簡単には行かないか。
「ラティアスの目覚めるパワーは、炎だったか。危ない危ない」
「電気技は水で防ぐってね」
『理解不能、理解不能ロト』
 相性を無視した戦法に、ロトムはオーバーヒートする。

「さて、小手調べは終わり。本気でやりましょうか」
「あぁ。石の様に堅い男を見せてやる」
 カスミは髪飾りに触り、タケシは服を脱いでキーストーンを取り出す。
『メガシンカッ』
 その時、フィールドが光に包まれて、圧迫感が押し寄せる。
「メガギャラドスとメガハガネール。迫力が凄いな」
「ユウキ、俺達も負けていられないぜっ」
 俺にもメガシンカさせろって事なんだろうが、嫌だなぁ。
「フーンッ」
 ラティアスも催促してくるが・・・・・・。コイツ、台詞を言わないと何故かメガシンカしてくれないんだよな。
 しかも、その決め台詞は悶絶して俺が死ぬ。
「何をボサッとしてるんだ? いわなだれっ」
「っ、サイコキネシスで止めろ!」
 メガハガネールがフィールドの岩を壊してくるが、サイコキネシスで破片を宙に浮かせて受け止める。
「悩んでる暇は、無い、かぁ」
 本心ではまだ駄々を捏ねている俺を押し殺して、勝つために決断する。っしゃ、オラッ。やんぞオラッ。

「愛しき竜よ。美しき姿で、愛を示せっ。メガシンカッ」
 あぁぁぁッ、おぉんッ、くっころぉっ。
「フゥゥゥッ」
 俺の羞恥心がダイナミックフルフレイムしているのを無視して、ラティアスは歓喜の鳴き声を上げながら姿を変化させる。
「はっ、殺気!?」
 観客席の方から物騒な視線が突き刺さるが、勝負中なので振り向けないっ。
「もう、一番のライバルはやっぱりラティアスなのかしら。ムカつくから、とりあえずハイドロポンプで」
「ムカつくってなんだよっ。上に飛んで避けろっ」
 メガラティアスは上に飛び、メガギャラドスの空いた隙にサトシがピカチュウにエレキボールを指示するが、
「させないっ、ジャイロボールッ」
 メガハガネールが、メガギャラドスを庇って電気の球を弾き飛ばす。
 くそっ、どうやって戦況を動かすか。
「ギャラドス、水を使って暴風よっ」
 カスミの指示で、水のフィールドが盛り上がり、竜巻が此方に迫ってくる。
「マズいっ、ラティアスッ、サイコキネシスで抑えろ!」
 しかし、暴風で出来た竜巻は一つでは無く、次々と迫る。
「隙ありよっ。ピカチュウを閉じ込めてっ」
 全てカバー出来ず、ピカチュウが竜巻の中に捕らわれてしまった。
「今までのチャレンジャーで、この暴風を突破したのは居ないんだから」
 カスミが勝利を確信したのか、得意げに笑う。
「へへっ。いい事聞いたぜ。なら、俺が一人目だなっ」
 だが、サトシは諦めるどころか、尚更燃えてるみたいだ。
「ピカチュウー、聞こえてるかー?」
 何かは知らんが、サトシには作戦があるみたいだ。
「ならっ、俺は援護に回ろう」
 しかし、絶好のチャンスを相手は逃すはずも無く。
「サトシの事だ、きっと何かある。ここで仕留めるぞ、ハガネールッ、あの中にストーンエッジ!」
 竜巻のしたから岩を突き刺す気か。
「させない、ラティアス、流星群だっ」
 降り注ぐ流星で、ピカチュウへの進路を塞ぐ。
「ピカチュウッ、電気を足場にして電光石火で駆け上がれっ」
 サトシの作戦に、思わず苦笑してしまう。
「ホント型破りだな。フォローは任せろ」

 そろそろ決着に持っていこうと、ラティアスに指示を出す。
「サイコキネシスで水を浮かべろっ」
 指示通りに、掬い上げられた水は宙に浮かぶ。
「ラティアス、竜巻の上に行けッ」
 丁度、竜巻から出てきたピカチュウをラティアスは背に乗せて飛ぶ。
「サイコキネシスを解除だっ」
 宙で固定された水は、大量の雨として降り注ぐ。
「決めろ、サトシ」
「あぁっ。行くぜ、コレが俺達のゼンリョクだぁっ」
 ラティアスに乗り、フィールドの上でZ技を発動させる。
「ギャラドスはともかく、ハガネールは・・・・・・はっ」
 タケシが余裕を出しているが、直ぐに何かに気付く。
「タケシ。ハガネール、びしょ濡れだな?」
 そう、さっきのサイコキネシスでハガネールはピカチュウに倒される事は決まっていた。
『スパーキングギガボルト!』
 上から叩きつける様に繰り出された電撃の塊が相手のポケモン達に当たり、衝撃で煙が立ち込む。
「まったく。懐かしい事をするな」
 タケシが苦笑すると、煙が晴れてフィールド内が露わになる。
「メガハガネール、メガギャラドス。共に戦闘不能、よって勝者はユウキ、サトシ!」
 ククイ博士の判定が下り、激戦の幕が下りた。

「はぁ。今回も、あたし達の負けね」
「また電気技で負けるとは思わなかったがな」
 俺は直接見ていないが、昔サトシが今の様な戦法でタケシに勝った事を聞いて、ティンと来た。
「フーンッ、フーンッ」
「あぁ、お疲れ様。ラティアス」
 褒めてと言わんばかりに、体を擦り付けて来るラティアスを撫でていると、
「また殺気!?」
 今度は振り向くと、アローラの女子組が居た。
『ユウキ』
 ひっ。何でこの子達の目に光が無いのっ。
「ま、まぁまぁ。今日のバトルで色々と感じたかな?」
 タケシが割り込んで来てくれて、空気が戻る。
「この体験をアローラに戻っても忘れない様にな」
 ククイ博士が最後に締めて、帰る為に空港に向かう。
***
「カスミ、バトルでは負けたけど、コッチは負けないからねっ」
「私が見事釣り上げるから」
「わたくしも譲りませんよ」
 なにやら女子達が話しているが、近づいてはいけないと俺の感が告げている。
「最後に勝つのは、このお転婆人魚のカスミちゃんなんだから」
 まだ飛行機に乗らないのかなー、早くお空に行きたいなー。なんて思ってると、タケシが肩を組んで来て小声で話してくる。
「ユウキ、相変わらずみたいだが、お姉さん属性にもフラグ立たせてないだろうなっ。そしたら許さんぞっ」
「いや、フラグて。なに言うてんの」
 血涙を流しているタケシを振りほどいて離れる。

「カスミ、タケシ。今度はアローラに来てくれよっ」
 サトシが二人にそう言うと、カスミ達は大きく頷いた。
「もちろん行くわよ」
「アローラに居るお姉さん達が俺を待っているからなっ」
 暴走するタケシの耳をカスミが引っ張り、
「まったく。それより、ユウキ。忘れ物よ」
 おん? いや、荷物は全部は持ったし__。
「はい、ハナダジムの合鍵。いつでも待ってるからっ」
 その時、カントーに来てから何回も経験した凍える空気が漂う。
 恐る恐る、後ろを向くと、
「あっ・・・・・・」
***


 カントーでの特別課外授業は終わった。
 懐かしい仲間と再会し、熱いバトルを味わう事が出来て良かった。
 感傷的になって、久しぶりに他の仲間達に会いたいと思ったけれど、暫くはいいかなって。
 飛行機の中で瀕死になっている俺は、そう感じた。