転生先はポケモン 15話

転生先はポケモン 15話

カントーに向かってとんぼがえり 前編


いつも通りの朝。ポケモンスクールの教室。
だけど、長い時間が経った気がするな。
皆の手持ちポケモンを期間限定で交換して、その結果リーリエが少しだけピカチュウに触る事が出来たり、サトシのルガルガンが新種らしい黄昏の姿に進化したりなど、色々あった。

 今日も楽しい授業が始めると思ったら、自然と顔が緩んでくるな。
 始業時間になり、ククイ博士とナリヤ校長が教室に入ってくる。

『アローラ!』
 皆で挨拶をすると、校長が前に出てきて大きく両手を挙げた。

「アローラ! えーこの度、ポケモンスクール開校二十周念を祝して特別な課外授業を行うことになったん・・・・・・ダンゴロ! ガントル! ギガイアス!」
「特別な課外授業!?」
 サトシが目を輝かせて、勢いよく席を立つ。
「行き先は、カントー地方だっ」
 ククイ博士がそう言うと、サトシはあからさまにガッカリと頭を項垂れさせた。
「なんだー、カントーかぁ。はぁ」
 いや、そんなガッカリするなっての。俺達の地元だし、あの誇り高きカントーの戦闘民族、マサラ人だろ。

「私の従兄弟、オーキド博士の研究所を訪ねてカントーのポケモンをたっぷり見てもらいたいんだ」
「そして、カントーでの特別ゲストを呼んであるよ」
 校長と博士の言葉に、サトシだけでなく皆の気分が上がっているみたいだ。
『面白そうっ』
 そして、俺達はマサラタウンへと飛び立つ。
***
 マサラタウンの空港に着き、広い場所で全員が集まるまで待っていた。
「リーリエ、まだかなぁ」
 マオがそうぼやくが、確かにまだ来ない。
「いつの間にか、はぐれたのか? ちょっと探してくる」
 来た道を戻ろうとするが、少し離れた所にリーリエはシロンを抱えて男性に何度も頭を下げていた。
「あれ? あっ__」
 しかし、その男性は知っていた顔なのでサトシは短く息を漏らした。
「タケシーッ」
 そう、一時期だけ一緒に旅をした仲間だった。
 サトシはタケシに向かって走りだすと、タケシも気付いたのか、手を大きく広げて走る。
 しかし__。

「美しい! なんとお美しいキャビンアテンダントさん! この果てしない空で、僕と・・・・・・恋の逃飛行をしませんか?」
 サトシではなく、近くを通った女性に飛びついた。
 なんだ、いつも通りか。

「リーリエ、タケシと何かあったのか?」
 タケシは年上のお姉さんしか口説かないが、一応、念のために聞こう。
「知り合いの方ですか? あの人は、具合の悪いシロンを看てくれたんです」
 あぁ、なるほど。タケシは今、ドクター見習いだっけか。
 まだお姉さんを口説いているタケシに声を掛けようとするが、
「ったく! わざわざ空港まで迎えに来てあげたらこのありさまなんだから!」
「あだだっ」
 タケシの耳を引っ張って止める女性が現れた。
「カスミッ」
 サトシが嬉しそうに声を上げるが、俺の胃は悲鳴を上げていた。

「まったく。あんたはいつもいつも、・・・・・・うん? ユウキ?」
「あぁ、カスミ・・・・・・、久し、ぶりだな」
 気まずさで顔が引きつってしまうが、久しぶりの再会だ。笑顔を見せようじゃあないか。
「ユウキ、変顔してどうしたんだ?」
 サトシは少し黙ってようか。

「えぇ、久しぶりね。所で、あの事は考えてくれた?」
「いや、それは、お断りしたはず、だろう?」
 今すぐにアローラに戻りたいっ。
 細かい事は省くが、昔一緒に旅をしていた頃に、ハナダジムでカスミの姉達と一悶着あった。
 その結果、何故かカスミと一緒にジムを運営しろなんて、三姉妹から意味の分からない要求を突き出されたんだ。
 カスミも満更でもなさそうな態度してないで、止めて欲しい。

「そう。まぁ、姉さん達が煩いから早く決めてよ」
「おぉん・・・・・・。んんっ、紹介するよ。タケシとカスミだ」
 話を逸らす為に二人をアローラ組の前に立たせる。
「あぁっ、カントーを一緒に旅した仲間だっ」
 いいぞサトシ。そのまま有耶無耶に、
「初めまして、世界の美少女でハナダジムのジムリーダー、カスミよ」
 ふぅ。変な空気が戻った。
「そして、ユウキはマイステディよ」
 あれ? 空気がいきなり冷えたな。
「ははっ、カスミ。俺に対して、ポケモン出す時の決め台詞を言うなよー。俺はポケモンじゃないぞー」
流れ出る冷や汗を必死に拭いながらアローラ組を見ると、
『ユウキ・・・・・・?』
 フリーザが出す吹雪よりも冷えた空間があった。
「いや、ほらっ、サトシが良く『君に決めたっ』とか言ってるだろう? 同じく別に深い意味は無いと思うぞっ」
「いや、俺はちゃんと__んぐっ」
 ちょっと黙ろうか、弟よ。
 というか、何でこんな弁明しなきゃいけないの?
「ご、ごほんっ。そして俺は、ポケモンブリーダーにしてポケモンドクター研修生。さらに、ニビジムの元ジムリーダーのタケシです。どうぞよろしく」
 すかさずタケシが、地割れでこの空気を瀕死にさせる。
 流石タケシ、その鋼の肉体とメンタルで躊躇無くこの場を切り刻むなんてっ、そこにシビれる憧れるぅ。
「なぁ、特別ゲストってもしかして二人なの?」
 サトシがそう聞くと、博士が苦笑いで答える。
「ま、まぁ、その辺は研究所に着いてからな。オーキド博士を待たせてるしね」
 俺達は、博士の後に続いて研究所に向かう。
 だけど、後ろから繰り出す女性陣の睨み付ける攻撃に俺はメンタルを削られる。
 いや、もう蛇にらみだわ。
***
 研究所に着き、オーキド博士に挨拶を済ませた後は、アローラとカントーで姿が違うポケモンを見る事になった。
「うわー、カントーのナッシーは小さいなぁ」
「おいマオッ。ダ、ダグトリオの毛が無い、ぞっ」
「カキ、カントーのはツルツルなんだよ。あっ、ベトベトン久し、ぶ、り」
 タケシは、ベトベトンに呑まれてるサトシを懐かしそうに見ると、モンスターボールを取り出す。

「最後はコイツだな」
 ボールから出たのはガラガラで、
「おっ、アローラのガラガラなら俺が」
 カキもガラガラを出すが、二体のガラガラがお互いを見ると額をぶつけ合った。
「ちょっ、喧嘩は駄目だぞっ」
「落ち着けっ」
 カキとタケシはガラガラ達を抑えるが、喧嘩は収まらない。
「ピー、ピカチュー」
 ガラガラ達の間に割り込み、宥めるピカチュウ。
『ガラッ、ガラガラァッ』
 しかし、吹き飛ばされるピカチュウ。
 あっ、コレはマズいですねぇ。
「ピッ、ピカヂューッ」
『あばばばばばば』
 カントーの、ガラガラ以外、電撃、がぁ・・・・・・。
「この痺れる感じ、久しぶりねー」
 カスミは真っ黒な姿で懐かしむが、スイレンとカキが突然叫びだした。
「アシマリが居ないっ」
「俺のガラガラもだっ」
 辺りを見るが、近くには居ないみたいだ。
「二手に分けて探そうか」
 そう言って、俺達は男子と女子グループに分かれてアシマリ達を探しに出る。
***
 わざわざ男女に分けたが、個人的な事情ではない。
 本当だ。
「ガラガラー、何処だーっ」
 俺達は、不自然な岩場を登りながらガラガラを探していた。
「うーん、見つからないなぁ。よし、ここは僕の作った__」
 その時、足下の岩場が膨らみ上がり、目の前に巨大な影が現れた。

「イイッワーッ」
『なっ、イワーク!?』
「出てこい、マリルリッ」
 俺はマリルリを呼び出して、タケシと共にカキ達の前に立つ。
「落ち着けっ、何もせず、大人しくしていれば大丈夫だ」
 タケシの言うとおりに何もせずに身を強張らせていると、イワークは俺達に背を向けてこの場から移動を始めた。
『ふぅ・・・・・・』
 ほっと一息をついた瞬間__。
「ガァラガラーッ」
 何処からかカキのガラガラが現れて、イワークにホネこんぼうを繰り出した。・・・・・・は?
「タケシ、こういう場合はどうすれば?」
 カキが恐る恐るイワークを見ると、タケシはゆっくりとイワークに背中を見せて、
「逃ーげるんだよぉーっ」
『やっぱりかーっ』
 迫り来るイワークから全力疾走で逃げるっ。
***
「はぁ、はぁ。もう大丈夫みたいだな」
 あれから三十分程走ったぞ。
「あれ、あっちもアシマリを見つけたみたいだな」
 カキの目線を辿ると、女子達が仲良く話していた。
 ふむ。どうやら、あの凍える吹雪はもう起きないみたいだな。良かった良かった。
「ユウキ。何で満足げな顔をしているが分からんが、きっとそれは間違いだ」
 タケシが変な事を言っているが、聞き流す事にしよう。
「あっ、そっちもガラガラ見つけたんだねっ」
 スイレン達と合流して、研究所に戻ろうとした時__。
『あっ』
 ボールから出していたポケモン達が、降ってきた網に捕らわれてしまった。
「なんだ!?」
 
「なんだかんだと聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
 こいつらもカントーに来てたのかよ。
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
 おっ、この口上はカントー版じゃないか。
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵役」
 そこで、巨大なニャース型のロボットが森を掻き分けて姿を現した。
「ムサシッ」
「コジロウッ」
 この隙にポケモンを出して攻撃したいが、懐かしい口上なので最後まで聞いてやろう。
「銀河を駆けるロケット団の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「あ、ニャーンてニャッ」

 前口上が終わった後、呆れを滲ませた声音でカスミとタケシがため息を吐いた。
「あんた達、まだこんな事やってるの?」
「早くポケモン達を返せ。吹き飛ばされたくないだろう?」
 そう言われたロケット団は声を荒げる。
「うるっさいわねぇ。元祖ジャリガールにジャリボーイ二号っ」
「今度こそお前らのポケモンを頂くっ」
 ロケット団は網を引っ張って、俺達のポケモンを回収するが、そうはさせない。
「出てこい、バクフーンッ」
「ルガルガン、キミに決めたッ」
 俺とサトシでニャースロボを攻撃するが、
「噴火しろっ」
「ルガルガンは岩落としだっ」
「甘いニャッ。ニャニャニャニャニャッ」
 ニャースロボは、素早い打撃で攻撃を跳ね返してくる。
「俺達もやるぞっ。来い、クロバット」
「ええ、出番よ。マイステディッ」
 タケシのクロバットとカスミのヒトデマンか、頼もしいな。
「ヒトデマン、バブル光線っ」
「クロバット、超音波だっ」
 タケシ達も加わり、ロボットが崩れていく。

「ええいっ、まだよっ。ミミッキュッ」
 ロボットからロケット団が出てくると、ムサシがミミッキュを出した。
「カスミ、タケシ。あのミミッキュは以上に強い。気をつけてくれ」
 二人に忠告するが、空からナニか降ってくるのに気付いた。
 地面に降り立ったそのナニかは、
「きゅー」
 体に謎の機械を取り付けた、キテルグマでした。
『え?』
 ロケット団を含めた、俺達全員が頭にハテナを浮かべていると、キテルグマはロケット団を抱えて空に飛び立った。
『なんでカントーまでぇッ!?』
 ロケット団の叫びが空に消えた後、一件落着かと思われた。
「相変わらず、変な奴らねー。あれ?」
 カスミが瓦礫の山と化したニャースロボを見て、何か気付いたみたいだ。
 目線を辿ると、瓦礫の中からポケモンが這い出てきた。

「プリュッ」
 え、こいつは__。
『可愛いーっ』
 アローラ組の女子達が盛り上がるが、ソイツは駄目だ。
「・・・・・・あのマイクを持ってるプリンって」
「マズいっ」
「皆っ、そのプリンの歌を聴いたら駄目よっ」
 カントー組は別の意味で盛り上がる。
 俺は巻き添えを食らわない様にこっそりと__。
「プー、プリュー。プープリー」
 あっ__。
***
 目を覚ますと、最初に目にしたのは化け物だった。
「お、ユウキ。起きたか」
「今回の落書きは酷いな、タケシ」
 そう、あのプリンは歌の途中で寝ると、機嫌を悪くして顔に落書きをするんだ。
 眠らせてくるのは、あっちなのに理不尽だ。
「それより、ユウキの顔はハートマークで埋め尽くされてるわよ」
 カスミの指摘に思わずため息を吐く。
 あのプリン、何故か知らないが俺にはハートマークしか書かないから不思議だ。
 首を傾げていると、今度はカスミがため息を吐いた。
「ユウキも相変わらずね」
 理解出来ない俺は、さらに首を傾げるだけだった。
***
 研究所に戻った俺達は、母さん達の計らいで歓迎会を開いていた。
「あぁ、カキっ、それ僕のお肉だよっ」
「焼き肉は戦争なんだ、マーマネ」
 そこで、今まで姿が見えてなかったロトムが帰ってきた。
「ロトム、何処行ってたんだ?」
 サトシがそう聞くと、ロトムは悔しそうに辺りを飛び回る。
『ロトー、カントー図鑑コンプリートしに行ってたロト』
 その時、離れた所にある木々の間からポケモンらしき影がチラリと見えた気がした。
『うーん、あと一体なのに見つからないロトー』
 そのポケモンらしき影が飛び上がり、
「ミューウ」
 ・・・・・・いや、まさかな。確かめに行きたいけど、
「ね、ユウキっ、コレはマオちゃんが焼いたお肉だよっ」
「ユウキ、このスープ作るのに私も手伝った」
「わたくしは本で見たので、この完璧に味付けされた__」
 アローラ組の女の子にどんどん料理を盛られていたので動けない。
「もう、貴女たち。ユウキが困ってるから落ち着きなさい」
 カスミッ、意外な助けだけど、助かっ__。
「だから、この美少女カスミちゃんが持ってきたコッチを食べなさい」
 あぁっ、絶望したっ。
 あられが降るこの状況をどうにかしようと画策していると、サトシ達と話してる母さんの会話が聞こえてくる。
「それでね、サトシの部屋ってば散らかってるのよー、見てく?」
「ちょっ、ママッ」
 カキ達にサトシの部屋を見せるつもりか、ご愁傷様だな。
『ユウキの部屋もありますよね?』
 あれ? 目の前居た女子達がいつの間にか母さんの方へ。
「え、えぇ」
『お邪魔します』
「待て、お前らっ」

 勝手に部屋に入ろうとする女子達を止めていると、博士が手を叩いて注目を集める。
「ほらほら、明日の予定を発表するぞー」
 博士の呼びかけでなんとか収まり、元の場所に戻る。
「明日は朝から電光石火でハナダジムに行って、ジム戦だ」

 ハナダジム?
 あっ、急にお腹が痛くなってきたな。