転生先はポケモン 12話

転生先はポケモン 12話

 リーリエ、頑張っておさわリーリエ!

 ある日の放課後、教室で突然リーリエの声が響いた。
「た、大変です! シロンがっ」
 声を聞いた皆は、リーリエの周りに集まる。
「シロンって何だ? __って、卵が光ってるっ」
 カキが聞いた事ない言葉に疑問を口にするが、それよりも卵が光って動いてる事に驚きを表す。
「えっと。白くて、よくコロンコロンと動くのでそう呼んでいるんです」
 リーリエが疑問に答えた時、卵にひびが入る。
「う、生まれるぞ」
 皆が固唾を呑みながら、見守る。
 そして、卵がさらに激しく光り輝き、殻が破れる。
『やった、生まれたーっ!』
 生まれてきたのは、白い姿のロコンだった。
 声を揃えて、祝福をする。
「シロン……。良かった、無事に生まれて」
 リーリエが嬉しそうに声を弾ませて喜ぶ。
 撫でようと、リーリエの手が伸びるが__。
「リーリエ、もしかして」
 スイレンに聞かれたリーリエは、顔を暗くして手を自分の胸に置く。
「そんな、卵の時は触れたのに……」
 マオが驚いていると、教室に新たな声が割り込む。
「み、みんなーっ。これを見てクレッフィ!」
 校長が光っている卵を抱えて、ククイ博士と飛び込んできた。
 カントーから持ってきた卵が、今まさに生まれようとしていた。
 卵を机に置いた時、眩しく光って、殻を破る。
 そして生まれてきたのは、ロコン。
 しかし、こちらのロコンは赤い姿のよく知る方だ。
「こっちは知ってるロコンだけど、白い方はアローラの姿なのかな?」
 俺がそう聞くと、マーマネが答えた。
「そうだよ。でも、僕達からしたら赤いロコンが珍しいんだよ」
「ロコン。アローラの姿……きつねポケモン。こおりタイプ。
マイナス五十度の息を吐き、あらゆるものを凍りつかせる」
 ロトムが突然解説を始めた。
「そしてこちらは、ほのおタイプ。六本のシッポは育つごとに毛並みがよくなり美しくなる」
「炎タイプか! いいなっ」
 カキは赤いロコンを前にテンションを上げる。
「こんっ」
 そんなカキに、ロコンは火を吹いた。
「ふっ。熱いな、お前」
 その火を正面から受けたカキは、爽やかに笑う。
 いや、髪が焦げてるぞ。大丈夫か、お前。
「よろしくな、ロコン!」
 そして、サトシはアローラのロコンに声を掛けた。
「コンッ」
 サトシは、ロコンから吹き出される粉雪を受けた。
「さ、寒い……」
 そんな白いロコンの周りに、他のポケモン達が集まる。
 赤いロコンを始め、集まったポケモンは白いロコン、シロンと仲良く遊ぼうと声を掛けるが。
「コーンッ」
 シロンはそっぽを向いてしまった。
「シロン、こいつらはお前と友達になりたいってさ」
 そう言ってみるが、またしてもそっぽを向く。
「しかし、このロコン達はどうするんだ?」
 カキがそう疑問を口にすると、校長が答えた。
「そのまま君たちが育てる。というのはどうだろう」
 校長はそう言って、赤いロコンを抱える。
「私がこの子を。君たちがその子を」
「誰かがゲットするって事ですか?」
 マーマネが首を傾げながら聞く。
「それなら、決まってるな」
 俺がそう言うと、マオや他の皆も同意する。
「うん、そうだねっ」
「あぁ、今まで卵の面倒を見てきたんだからな」
 全員が、リーリエを見た。
「え、わたくし……。触れもしないのに」
 リーリエは不安そうに、シロンを見詰める。
「パートナーになってくれる? シロン……」
「コンコンッ」
 シロンはリーリエの前に来て、嬉しそうに尻尾を振って鳴いた。
「シロンもリーリエが良いみたいだな」
「さ、リーリエ。これを」
 博士はリーリエにモンスターボールを手渡す。
「……はいっ。いくわよ、シロンッ。モンスターボォール!」
 リーリエは気合を入れて、ボールを投げるが__。
「いでっ」
 上に飛んで、俺の頭に落ちた。
「……ユウキ、ゲットですっ」
「リーリエ。ちゃんとやらなきゃだめだよ」
 スイレンの白い目がリーリエに突き刺さっている間に、転がり落ちたモンスターボールにシロンが触れる。
「あっ」
 誰かが声を漏らした時、シロンがボールに吸い込まれて、揺れが収まった。
「……シロン、ゲットですっ」
 リーリエは嬉しそうにボールを拾い、シロンを出した。
「コンッ」
 出てきたシロンを撫でようとするが、やはりリーリエの手は止まってしまう。
「やっぱり、まだ……。どうしたら皆さんのようにポケモンと上手く付き合えるのでしょうか」
 リーリエの目線は下のまま、ポツリと言葉を溢した。
「まぁ、ポケモンと人との関係はいろいろある。ポケモンとどんなふうに関わりたいのか、それは自分自身で見つけていくしかないんだ。リーリエにも、それはきっと見つけられる筈だよ」
「自分自身で……」
 元気づけるようにそう声を掛けるが、リーリエはシロンを見詰めたまま動かない。
「俺は決まってる! ポケモンマスターになる事だっ」
「いや、サトシには聞いてないよ」
 そう突っ込むと、皆が笑いながら言う。
「ははっ。サトシらしいな」
「だっろー?」
****
 下校時間になり、皆は帰路につく。
「あれ、リーリエ。迎え来てるよ」
 スクールの正門に、黒塗りの車が停まっていた。
「あっ、はい。すみません、今日は歩いて帰ろうかと」
「かしこまりました」
 リーリエが運転手にそう言うと、車は走って行った。
「どうして車に乗らなかったんだ?」
 そう聞くと、リーリエはシロンを見ながら答える。
「今日は、この子と歩いて帰ろうと思うんです。卵の時はずっと一緒でしたが、今のこの子はまだ知らない事だらけなので……。知るための時間を作ろうかと」
「うんっ。いいんじゃないかな! 頑張ってねリーリエ」
 マオはそう言って、リーリエを送り出す。
「はいっ。では、ごきげんよう!」
 リーリエは片手を上げて、シロンと共に歩き出した。
「おう、また明日なー」
 俺もそう言って、先に帰ったサトシを追いかけようと__。
「行くよっ、ユウキ!」
「ぐへっ。行くって何処にっ!?」
 マオに襟を摑まれ、引っ張られる。
「リーリエの後をついて行くのっ」
「へ、なんで。ちょっ、分かったから、歩くから、引っ張らないで」
 仕方なくマオと共に、リーリエの後ろをこっそりとついて行く。
「マオは、本当にリーリエが心配なんだな」
「あんなにポケモンが好きなんだもん。リーリエにもポケモンと楽しく過ごしてほしいじゃない」
「ま、そうだな」
 俺も、ポケモン達とふれあうのが好きだし。
「って、ユウキ!」
「ん? あっ。」
 いつの間にか、リーリエ達を見失ってしまった。
「どこ行ったんだろう。仕方ない」
 周りを確認して、モンスターボールを取り出す。
「ラティアス」
 声を掛けると、ボールの中からラティアスが出てくる。
「リーリエ達を探してくれ」
 ラティアスは頷くと、体をステルス状にして飛び立っていった。
「よし、俺達はこっちを探そう」
 マオと共に、ラティアスと別の方向を探に行く。
 数分後、透明になっているラティアスに手を引っ張られる。
「お、見つかったのか?」
 そのまま引っ張られて行くと、女の子向けのアクセサリーショップの前に着いた。
「お前なぁ。はぁ、今度買ってやるから、今は__」
「キャアァーッ!」
 駄々をこねているラティアスを諫めていると、女の子の叫び声が響いた。
「今のって!」
「あぁ、こっちからだっ」
 今のは、リーリエの声だ。何かあったのかと、焦って声が聞こえた方に走り出す。
 路地裏を抜けると、目の前には壁があって行き止まりだった。
「おかしいな、確かにこの辺から……」
「ユウキッ、上!」
 マオに言われて上を見ると、リーリエが落ちてきた。
「__っ!? ラティアス、サイコキネシスッ」
 落下してくるリーリエを、強力な念力で宙に浮かせてから抱きとめる。
「げっ、ジャリブラザー」
 壁の上から声が聞こえたと思ったら、ロケット団がいた。
「お前ら、またなんかやったのか」
「へんっ、やるってーの? ミミッキュ、やっちゃって!」
 ロケット団のムサシがミミッキュに指示を出すが、一向に動かない。
「だから、ミミッキュはピカチュウが居ないとやる気が出ないニャ……」
 行動を起こさないロケット団に対して、リーリエは立ち上がりシロンに指示を出す。
「シロン、あの人達にこなゆきよっ!」
 シロンはこなゆきを出して、ロケット団を氷漬けにする。
「クゥーッ!」
 そこに、キテルグマが現れてロケット団を担いで退場していった。
『なにこのかんじー』
****
「なぁ、いつの間に触れるようになったんだ?」
「え、本当だ! リーリエ、シロンに触れてるっ」
 落ち着いた頃にリーリエをふと見ると、シロンを抱きかかえていた。
「えっと、はい。シロンを助けたいと飛びだしたら、いつの間にか抱き締めていて……」
「まぁ、良かったじゃないか」
「はいっ!」 
 リーリエは嬉しそうにシロンに頬擦りする。

 どうやら、卵の時と同じように必死なうちに克服したようだ。
「フゥーン」
 周りに人が居ないので、ラティアスは姿を現して先程リーリエを受け止めた時に落ちた帽子を拾い、リーリエの頭に被せる。
「ひっ!」
「あ、すまん」
……どうやら、まだシロン以外はダメみたいだ。