変態教師は触りたい。6話

 

 気温が高くなり始め、夏へと移り変わるこの季節。
 学生は、楽しみにしている授業があるのではなかろうか?

 プール授業!

 男子は、気になるあの子の水着姿を目に焼き付けたいと興奮し、女子は自分のプロポーションが変ではないかソワソワしてしまう。
 とにかく、思春期な生徒達にとってはテンションが上がる授業なのである。

「はわー、疲れましたー。腕がもう動きませんー」
「まだまだ汚れている所があるぞ、藤原書記」
 しかし、授業を行うにはプールの清掃が必要。
 生徒会は今日中に終わらせるよう、頼まれているのであった。

「無駄に広いですし、休憩しましょうよー」
「まだ一時間しか経っていませんよ、藤原さん」
 藤原が嘆くのも無理ないだろう。名門校と言うだけあって、広いのだ。

「西園寺先生はテキパキやってますね。・・・・・・なんか機嫌悪そうですけど」
「喋ってる暇があったら手を動かせ、石上」
 ビクッと反応した石上は、ゴシゴシとデッキブラシを動かしていく。
「会長、せんせーは何で機嫌悪そうなんですかねー」
「さぁな。でも、この暑い中でだだっ広い所を掃除なんてしてたら、機嫌も悪くなるだろうよ」
 プールの隅で黙々と掃除している西園寺を見て、白銀達は首を傾げた。

 西園寺は確かに不機嫌だ。
 しかし、プール掃除の仕事を引き受けた当初は、上機嫌であった。
 では、何故急に機嫌が悪くなったのか?
 答えは単純。
「ちっ。(プールを掃除するなら水着だろ!? 何で藤原達は体操服なんだッ)」
 そう、この男は藤原と四宮の水着姿を期待していた。
 つまりは、自分勝手に機嫌を悪くしているだけである。

「白銀、流すからホース引っ張ってこい」
「は、はい」
 突然、西園寺に呼ばれた白銀は、慌てて行動した。

 勢いは弱いが、ホースから水が流れている。
 そして、『プールでは走ってはいけない』という周知の事実を破った白銀に起きた事は、
「西園寺先生、持ってきま――うぉっ」

 ――ジャバァッ!

「痛てて・・・・・・ん? ・・・・・・あっ」
「会長・・・・・・」
 水が出ているホースを持ちながら、白銀は走った。
 清掃中である為、床のヌメリは激しい。
 勢いよく足を滑らせた白銀が、目の前の人物を見上げた時、死を覚悟した。
「着替えて・・・・・・きます」
「す、すまんッ」

 四宮の体操服は、水を被った事でずぶ濡れだ。
 そしてもう一度言うが、水着ではなく体操服だ。
 ならば、分かるだろう。この男の脳内が。

「白銀、気をつけろ。(白銀、ナイスゥ! おいおい、四宮の下着は黒かよぉッ。とんだおませなお嬢様だぜ!」
***

 それから二時間。
 生徒会一同は、プールの清掃を完了させた。

「はぁーッ。やっと終わりましたー」
 藤原がグッタリとベンチに座り、空を仰ぐ。
「これだけ頑張ったんです。僕達に何かご褒美は無いんですかね」
「そうですそうです! 何かないんですかー!」
 石上と藤原が文句を垂れ、白銀と四宮は溜め息を吐く。
「これは生徒会の仕事だ。あるはずないだろう」
「労働には対価が必要なんですよ、会長」
 石上達は納得いかずブーブーと言っていると、報告に行っていた西園寺が戻ってくる。

「せんせー。なにかご褒美を下さい!」
 西園寺が「ふむ」と一考した後、ニヤリと笑った。
「短い時間だが、プールで遊んでいいそうだ」
 その言葉に、藤原は一瞬沸き立つも、すぐに気を落とした。
「あっ、水着持ってきてません」
 しかし、西園寺は笑みを崩さない。
「来月、西園寺グループから新作の水着が発売される。偶然、本当に偶然だが、丁度学園に持ってきている。試しに着ないか?」
 偶然ではない。
 プールで遊んで良いと言われた西園寺は、すぐさま会社に連絡して持ってこさせた。
 欲望に忠実な男、西園寺金継。
 その行動力だけは、立派と言わざるを得ない。

「やったー!」
「僕達の分もあるんですか?」
「人数分あるぞ」
 更衣室に向かう藤原達を見て、西園寺は一人プールサイドでニヤリと口を歪ませた。
「計画通り」
***

 数分後。
 
「じゃーん! どうですか?」
「ちっ」
 自信満々の藤原と、藤原を見て舌打ちをする四宮が出てきた。
 黒いスポーツタイプのセパレートを着た四宮と、露出の多い薄ピンクのビキニに、ゆったりとしたパレオを巻いた藤原。
 その姿を見た西園寺は外面を大人しくして、一言。
「ふむ。良い感じだな。(やっべー! 藤原の破壊力がヤバい! 何あれッ、歩く度にホップステップジャンプしてる! くっそぉ、あの乳に思いっきりビンタしてぇ。対して四宮は・・・・・・ふっ)」
 心の中で失笑した西園寺に気付いたのか分からないが、四宮はガンを飛ばす。
「な・に・か?」
「い、いやッ。はっ! ほら、白銀がきたぞ」
 背中から般若のオーラを飛ばしてる四宮を、白銀に押しつけて、西園寺はプールサイドに置いてあるベンチに座った。

「あれ? せんせー、泳がないんですか?」
 そんな西園寺に、藤原は声を掛けた。
「少し休む。(ここから水着を眺めるのが最高なんだよ!)」
「えーッ、一緒に泳ぎましょうよー」
 納得いかないのか、藤原は西園寺の腕を引っ張った。

「だから休むって――はっ!?(なん、だと?)」
 突然、動きを止めた西園寺。
 その訳は、
「泳ぎましょーよー」
 ――フニョン、フニョン、ポヨン。

 挟まれている。
 腕が、挟まれている。
 その豊満な脂肪で、ガッチリと!

「分かった。着替えてくる」
「やったーッ」

 感情の乏しい表情をそのままに、西園寺は更衣室へと向かって行った。
 プールサイドには、赤い水滴がいくつか発見されたという。


「うっ・・・・・・ふぅ」

 ――本日の勝敗『西園寺の負け』
 藤原の兵器に抗えず、弾切れを起こした為。