転生先はポケモン 30話

 進撃のポケモン


 今日も楽しいポケモンスクールの授業・・・・・・ではない。
「なぁ、サトシ。これからどうすんだ?」
「おーいっ、ユウキも乗れよーっ!」
「やっぱり子供はポケベースが出来るくらいでしょうか?」
 駄目だ、コイツら聞いてねぇ。

「ホント、どうしよう・・・・・・」
 周りにいる野生のポケモン達を《《見上げて》》、溜め息が出てしまう。
 
 どうしてこうなったと、今朝のポケモンスクールを思い返す。
***

「アッ、ローラ!」
 今日はスクールに特別講師が来ると聞いてたけど、
「なんでザオボーなんだよ」
 コイツのやらかした事を皆は許したとはいえ、まだ油断できない。
「本日は皆さんに科学の素晴らしさを伝えに来ました! ザオボー先生と呼んでください!」
「はーいっ、ザオボー先生ー科学ってなんですかー?」
 サトシが元気よく質問するが、お前・・・・・・科学にめっちゃ詳しい仲間と旅してただろうが。
「えぇ、お見せしましょうっ」
 ザオボーが大きめの機械を台車でガラガラと運んできた。
「これは?」
「皆さんが普段何気なく使ってる、モンスターボール。これは凄い発明だと理解していますかな?」
 確かに、明らかボールより大きいポケモンもスッポリだもんな。
「そこでモンスターボールをヒントにして、この発明品を作ったのですっ。それがこのスーパーシマウンデザオボーDXです!」
 スーパーシマ、なんだって?
「このマシンはどんな巨大なモノでもカプセルに収めることが出来ますので、家を小さくして楽々引っ越しなんて事もできちゃうのです!」
 まぁ、そりゃ凄いな。
「では早速、この黒板を小さくしてみせましょう」
 ザオボーがスイッチを押すと、モンスターボールにポケモンを入れる時のような光線が出た。
 黒板に光線が当たると、
「ん? 何も起きないじゃないか」
 もう一度押しても、変化なし。
「失敗作か?」
「そんなっ、実験段階では成功したのに!」
 何度もスイッチを押すザオボーに、皆の疑惑の視線が突き刺さる。
「一度、再起動しては?」
「そ、そうですねっ」
 ククイ博士の助言に喜々としてやり直すザオボー。
 そして、
「コレなら!」
 スイッチが押され、光線が出る。
 だが、黒板に向かわず彼方此方に教室内を跳ね始めた。
「ちょっ、壊れた!?」
「そんな筈は――」
 マオの指摘を否定するザオボーだけど、完全に壊れてんだろ!?
「危なッ。急いで机の下とかに避難しろ!」
 光線を避けながら叫ぶと、皆は散り散りに隠れるが――。
「ちょっ、リーリエっ、ここもう入れないって! 狭いッ」
「一番近かったんです!」
 俺とサトシで窮屈なのに、同じ教卓の下に入って来やがった。
「あっ」
「どうしたサト――」
「クンクン、ユウキのいい匂――」
 気が付いたら目の前には光線が迫っていて――。

「あれ、なんともない?」
 光線は確かに命中した筈なのに、体は痛くもなんともない。
「やはり失敗作だったんでしょうか?」
「ピカチュウ?」
 何やらサトシは天井を見て呟いているが、ピカチュウはそんな所に居ないだろ――あ?
「ピッカァ」
 ・・・・・・デカチュウ。
「いやいや、え?」
 まさかと思い、辺りを見回すと、
「俺達、小さくなってる!?」
「あ、ユウキ達が小さくなってる」
 
 俺達に気付いたスイレンに上げてもらい、教卓の上でザオボーを睨み付ける。
「それで? これは? どういう事なんだ?」
 事態は深刻な筈なのに、ザオボーは慌ててない様子だ。
「ご安心ください。付属品のカプセルを使えば問題ございませんよ」
 そう言われて、透明なモンスターボールのようなカプセルの中に入れられた俺達。
「こうして、ポケモンを出すのと同じ原理で・・・・・・ポチッとな」
 スイッチと同時にカプセルが開くと、
「ほーん、で?」
 変わらず小さな姿でザオボーを睨むと、今度は慌てだした。
「そんな筈は!?」
「ザオボーさんっ」
「失敗部長」
 皆が辛辣な言葉を吐いてると、離れた所からサトシの声が聞こえてくる。
「ひゃっほーっ、ライドピカチュウ楽しい!」
「偶にお前のポジティブさが欲しいと思うわ」

 そこから数分後。
 修理が終わり、マシンの前に立つ。
「今度こそ、ほんとーにっ大丈夫です!」
 次に失敗したらしばくぞ。
「さぁっ、スイッチオ、スイッチ・・・・・・」
 なんだろう。この嫌な予感は。
「スイッチ――オンッブッシャァッ!」
 突然発生した突風。気付いたら、俺達は空を舞っていた。
「は?」
***

 まったく。飛ばされた先に偶然ツツケラが居たから良かったものの、危うくペチャンコになるところだったぞ。
「ツツケラから振り落とされてこんな場所に来たが、どこだここ?」
 小さいせいか、知らない場所に見える。
「ポケモンスクールから遠い場所なのは確かですね」
 リーリエと一緒に現在の場所を特定しようと――。
「ユ、ユウキ・・・・・・」
「あー、サトシ。ちょっと待ってくれ、いま」
「後ろ・・・・・・」
「あん?」
 サトシの固い声音に振り向くと、コラッタが俺達を見ていた。
 その目は獲物を見る目で、涎をポタポタと垂らしている。
「サトシ、リーリエ」
 俺の呼び掛けに、二人は頷き、
「逃ーげるんだよぉ!」
 一斉に駆けだした。
「はぁ、はぁっ、駄目です追いつかれます!」
 くッ、この姿じゃ逃げ切れないかッ」
「こうなったら俺がッ」
 いくらサトシでも無茶だッ!
 何か手を・・・・・・ハッ、モンスターボール!
 腰に付けているボールを手に取り、バクフーンを呼び出すが、
「出て来ない!?」
 小さくなった影響か!?
「きゃあーッ」
「うわあっ」
 マズいッ、リーリエ達が――あれは!
 一か八か、目についたモノを蹴り上げるッ。
「あ、あら?」
 蹴り上げたモノが、リーリエ達を食べようとしたコラッタの口内に入ると、
「ヂュウーッ」
 俺達の反対方向へと走りだした。
「助かったー、サンキューユウキ!」
「ふぅ。ありがとうございます」
 コラッタに食わせたのは、フィラの実。
 辛いのが苦手なポケモンが食べると混乱するから、一か八かの賭けだった。

「決めました!」
 突然、髪をポニーテールに縛ったリーリエ。
「何をだ?」
 ふんすっ、と気合いを入れたリーリエは宣言する。
「この姿で生きていく事をです!」
「考え直せ」
 ふむ。リーリエはさっきのフィラの実を食べてしまったのか?
「サトシ、お前もリーリエに無理っていってくれよ」
 ってあれ? サトシ何処行った?
 隣に居たサトシがいつの間にか消えてる。と思ったら、
「ひゃっほーッ、デデンネライド楽しいー!」
 偶にお前のポジティブさがイラッとくるよ。
「そうですね。この姿は大変ですから、まずは人手が欲しいですね。ここはわたくしとユウキで――」
 ぶつぶつと独り言を呟いているリーリエから離れ、サトシの元へ向かう。
***

 そして今に至る、が。
「本当にどうすんだよ」
 さすがにこのサイズで生きていく自信は無い。
「とりあえず、この野生ポケモンだらけの所から離れよう。スクールに帰るんだ」
「ですが、どうやって?」
 正常に戻ったリーリエと悩むが、手段が思いつかない。
 まず此処が何処か分からないし、分かっても徒歩じゃどれくらい時間が掛かるか・・・・・・。
 その時、上空からサトシの声が聞こえ――え?
「おーいッ、ユウキーッ、リーリエーッ」
 サトシはキュワワーに掴まって空を飛んでいた。
「ちょっ、おまっ!」
「わたくし達もやりましょう!」
 急いで、まだ低い位置に居るキュワワーに掴まる。
「リーリエ、別に同じキュワワーに掴まらなくても」
「一番近かったんです!」
「あ、そう」
 
 上空から見る景色で、スクールからそんなに遠くない事が分かった。
「あ、意外と近かったんですね」
「俺達縮んでるからなー、知ってる場所でも大冒険だな」
 そうして暫く空中で佇んでいると、黒い物体が近づいてくるのが見えた。
「ユウキ、ヤミカラスですね」
「そうだな。ヤミカラスだな」
 その目は獲物を――。
「ってマズい! キュワワーッ、逃げてくれ!」
 しかし逃走は間に合わず、ヤミカラスに突かれたキュワワーは飛ばされ、その反動で振り落とされてしまった。
「くっ、リーリエ!」
 せめてリーリエをと抱き寄せ、衝突に備える。

 ――ポヨンッ。

「あれ?」
 閉じた目を開くと、無事が確認できた。店のテントに着地したみたいだ。
「ユウキー!」
 サトシも無事みたいだ。下から手を振ってくる。
「この店って、スクールから直ぐの所だったよな」
 着地した場所を確かめ、今日中に帰れる事に安堵する。
 
「さて、スクールに向かうか」
 路地に降りた俺達は疲れている足を動かし、
「ん?」
 ふと影が被さるのに気付く。
「・・・・・・ペルシアン?」
 次から次へと! 帰ったら絶対にザオボーをしばくッ。

「あそこに逃げようッ」
 サトシが指した路地裏に逃げ込むが、
「行き止まり、か」
 まさに袋のコラッタ。
 こうなったらスーパーマサラ人の俺とサトシでどうにか――。
「アマージョッ、お願い!」
 その時、ペルシアンの後ろからマジカルリーフが飛んできた。
「マオッ」
 ウルトラガーディアンズの制服を着たマオとアマージョが窮地を救ってくれた。
「やっちゃって!」
 アマージョは跳び、トロピカルキックを放つ。
「ペルシャアッ」
 まともに食らったが、ペルシアンはまだ諦めていないようだ。
「ふみつけ!」
 ふみつけたアマージョはペルシアンを見下していた。
 少し前にアママイコから進化したけど、すっかり変わったなぁ。まるで女王様だ。
 そこでようやくペルシアンが逃げて、マオと追いついた他の皆が走ってくる。
「皆さん、何故わたくし達の場所が?」
「探してた途中にサトシのピカチュウが野生のデデンネと話しててね。ここまで来て、ペルシアンが小さいユウキ達を追いかけてるのが見えたの」
 何はともあれ、これでようやく――。
「いや、元の大きさに戻るまで安心出来ないな」
 ここまで散々だったんだ。また何か起きるかもしれない。
「まぁ戻らなかったら戻らないで、わたくしはユウキと一緒に生きていきますよ」
「そっか。リーリエはそのままで良いんだね。わかった。じゃ、ユウキは私の手に乗って」
「出来心です冗談です置いていかないでッ」
***

「さて、どうしてくれようか」
 元の姿に戻り、俺に詰め寄られたザオボーは冷や汗を流して目を逸らす。
「そ、その前にマシンの力をお見せしましょう!」
 コイツ、まだ懲りてないのか!?
「ポチッとな」
「ちょっ、待て!」
 慌ててマシンを止めようとするが、
「・・・・・・なんだ、何も起きないじゃないか」
 やはり欠陥品か。スイッチ押しても反応が無い。
「ふむ。このマシンは諸悪の根源だ。破壊しよう」
「ま、待って下さいッ」
 マシンに手を掛けた俺を、ザオボーが止めてくる。
「えぇいッ、離せ! 今すぐ壊してやる」
「そうではなくッ、無理矢理動かすと――」
 その時、光線が俺に当たり・・・・・・。
「え? え?」
 サトシ達がどんどん小さくなってる!?
「お前ら縮んでるぞ!?」
 光線を受けたのは俺なのに、何故――。
「って、ユウキが大きくなってるんだよ!」
 え、俺? マオの指摘に上を見ると、直ぐ目の前に天井が。
「あッ」
 そのまま突き破り、首から上はポケモンスクールの外に出た。

「ユウキ、おっきい」
「たくましいですね」
「って言ってる場合じゃないよ!?」

 やっぱり今日は散々じゃないか。