変態教師は触りたい 2話


「邪魔するぞ」
 今日も変態行為を働こうと、生徒会室にやってきた西園寺。
「あぁ、どうも。丁度終わった所ですよ」
 片付いた書類を指さす白銀に、西園寺は感嘆の息を漏らした。
「相変わらず仕事が早いな」
「いえ」
 書類を確認しようと机に向かう西園寺だが、白銀達がやってる事に興味を持ったのか、立ち止まってジッと見た。
「あれ、もしかしてせんせーもやりたいんですか? ババ抜き」
 それに気付いた藤原書記が誘うと、西園寺が隣に座った。
「あぁ。(藤原のムチムチ太もも見てただけなんだけど、まぁいっか)」
 相変わらずの変態である。
「では、カードを配りますね」
 丁寧に配る四宮は、思い出したかのように口を開いた。
「そうそう。勝者は敗者になんでも一つお願いごとが出来るというルールがあります、が。常識の範囲内でお願いしますね」
「・・・・・・わかった」
 そんな事を聞いた西園寺はもちろん、
「(ん? 今なんでもって言ったよなっ。何しよっかな! やべ、テンション上がってきた――)」
 大興奮。まさに外面が剥がれそうな勢いで、心中は暴走を始めた。
 しかし、元々ババ抜きをやろうと提案していた四宮は周りに悟られない程度に機嫌を悪くしていた。
「では、始めましょうか。(はぁ、会長と二人きりでやろうと思っていたのに。藤原さんが邪魔をしてきて更に先生まで・・・・・・どうやって勝ちましょうか)」
 そう。四宮の計画では、あえて会長に負けて『お願いごと』を誘導するものだった。だが、邪魔が入った為に勝利を目指す。
 そんな思惑を知らない面々は、
「(勝ったら四宮に何させよう)」
「(そうだ、皆の恋バナを聞こうっと!)」
「(藤原のお――未成年閲覧禁止ワードのためカット)」
 一人を除き、平和な思考をしていた。

 四宮が白銀の手札を引き、西園寺が四宮のを引く。
「むっ」
 西園寺の表情が、ほんの少し動いた。
「あっ、せんせーババ引きましたねっ。よいしょっ、セーフ!」
 ジョーカーのカード、依然として西園寺の手札に。
 更に一周し、ここで西園寺が動く!
「むっ。そうきましたか」
 ババ抜きは運ゲーではなく、高度な心理戦である。
 相手の心理や表情を読み取り、如何にババを引かせるか!
「これかもしれない」
 西園寺は、手札の一枚だけを高く突き出した。
 これならば、引くか引かないかの二分の一。
「受けてたちます!」
 藤原は勢いよく突き出されたカードを引くと、女子にあるまじき声音を上げた。
「素直だな」
 単純な作戦に引っかかる藤原だった。
「ぶぅー、いいですよーだっ。会長に引かせ、引かせ――ヘクチッ。ズズッ、すみませしぇん」

 そしてゲームは順調に進み、残るは西園寺と四宮。
 だが、事は西園寺の有利に動いていた。
「先生。まさかと思いますが、なにかイカサマを?」
 綺麗にジョーカーを避け続ける西園寺に不信感を持った四宮は、ジロリと睨み付ける。
「していない」
 トランプカードを使ったイカサマは様々なモノがある。
 カードに分かりやすいよう、印を塗ったり傷を付けたり。
 そもそもがイカサマ用に作られたトランプだったり。
 だが、しかし。西園寺は途中参加。何かを仕込む暇など無い。
 ――偶然の産物を除けば。
「あら、残り二枚ですか。(もうっ、計画がご破算じゃないの! もし負けたらこの男をどうしてくれようかしらっ)」
 四宮は悪あがきに片方のカードをジッと見つめてブラフをかますが、
「あがり、だな」
 視線の反対を引いた西園寺で、決着!
「はぁ。私の負け、ですか。(どうやってこの男をクビにさせましょうか。そして何処か遠い国に――)」
 四宮が物騒な事を考えている傍で、白銀と藤原は西園寺を絶賛していた。
「最後は怒濤の勢いでしたが、やっぱり何かタネがあるんですか?」
「・・・・・・勘だ」
 白銀の質問に目を逸らす西園寺だが、藤原は気にせず褒め称える。
「野生の勘ですか? さすが、ワイルドな男は違いますねー」
「藤原のお陰で――いや、なんでも無い」
 慌てて口を噤んだ西園寺は、当初の目的である書類の回収に向かった。
「ん?」
 西園寺が書類の束を取ると、そこから小さな紙がヒラヒラと落ちた。
「それでせんせー、お願いごとは?」
 ふむ。と、一瞬考えた西園寺は、
「その権利、白銀に譲ろう」
 西園寺はそう言うと、書類の束から落ちた小さな紙。映画のチケットを白銀に渡した。
「え? ちょ、先生っ?」
「まぁ、西園寺先生がそう言うならそれでいいですよ(やっぱり素晴らしい教師ね!)」
 この後始まる天才達の恋愛頭脳戦に、西園寺は気付かず生徒会室を出て行った。

 西園寺のイカサマ疑惑だが・・・・・・タネも仕掛けも簡単なものだ。
 イカサマは、確かに印や傷を付けるモノがある。
 中には、香料を使うモノも。
 時を少し戻すと、
『――ぶぅー、いいですよーだっ。会長に引かせ、引かせ――ヘクチッ。ズズッ、すみましぇん』
 そう、匂い。
 西園寺は持ち前の変態的な嗅覚で、くしゃみの際に唾が付着したカードを嗅ぎ分けていた。
 本当に鳥肌が立つ。
 だが、代償があった。

 西園寺は勝利を手にし、その胸に膨らむ欲望をバレないよう『お願いごと』を企てていたが、

「ふむ。(パンツ洗わなくちゃ)」
 賢者になった。


 本日の勝敗結果『変態の勝利』変態が満足してしまった為。