転生先はポケモン 27話

 ここがあの女のポケモンハウスね
 

 スクールが休みの休日。
「ふぁー。今頃サトシは何してるのかねー」
 欠伸で出た涙を拭いながら、別の島に行った弟を思う。
 サトシは大試練の為にウラウラ島で頑張っているだろうか。
「ユウキ。休日だからってだらけるなよー。外出でもしたらどうだ?」
 ソファでゴロゴロしていたら、ククイ博士に苦言を呈されてしまった。
「うーん。別に行きたい所なんて無いしなー」
 今日は惰眠を貪ると決めたんだ。さて、もう一眠り__。

「ちょ、引っ張るなッ。ラティ、あがッ」
 勝手に出てきたラティアスに襟を掴まれて、ソファから落とされてしまった。
「はぁ。なんだ?」
 せっかくの眠気が吹っ飛んでしまったぞ。
「フゥン!」
 ラティアスは体全体を使って何か伝えようとしてるが、はて。なにか約束でもしたっけ?
「お前、何を言おうと・・・・・・。あぁ、そういえば」
 確か前に、買い物でも連れて行こうと言ったんだっけ。
「わかった、わかった。好きなモノ買ってやるってやつだろ」
 そう言うと、正解なのかラティアスは嬉しさを現すように飛び回った。
「んじゃ、行くか」
 こうしてゆっくり買い物に出掛けるのは、久しぶりな気がするな。
「ほら、ラティアス。準備しろって」
 真っ昼間から幻のポケモンを連れ歩く訳にいかないからな、キチンと準備しなきゃ。
***

 こんにちは、リーリエです。
 今日はマオとスイレンと一緒に、お買い物に来ています。
「ねー、こっちのアクセサリーも可愛くない?」
「マオちゃん似合う」
 夜には女子会という事で、お菓子などを買う予定でしたが、煌びやかなアクセサリーショップにつられて入ってしまいました。
 あら。こっちのリボンはシロンに似合いそうですね。
「あっ、ハートのうろこを使ったアクセサリーもいいなー」
「サニーゴの枝を使ったこのアクセも__あれ?」
 突然スイレンがお店の外を見ましたが、何か珍しいポケモンでもいたのでしょうか?
「ユウキだ」
 __シュバッ!
 不思議な事に、わたくし達の動きがシンクロしました。
 急いで持っていたアクセサリーを戻し、ユウキの元、へ・・・・・・。
「あの女の子。誰、かなぁ。かなぁ?」
 濁りきった目でユウキを見るマオですが、わたくしも同じ目をしているでしょうね。
 ユウキの隣を歩き、あまつさえ腕を組んでいるとは。
「尾行する」
 スイレンの提案に頷き今日の予定は、コッソリと泥棒ニャースな女の子の後をつける事に変更しました。
***

「はっ、殺気!?」
 ん? おかしいな。確かに今、体中の穴という穴が開ききる程の恐怖感が・・・・・・。
「フゥン?」
「あぁ、いや。なんでもない」
 俺の顔を心配そうに覗き込んでくる美少女。
 まぁ。鳴き声で分かるように、正体はラティアスなんだが。
 茶髪のセミロングで、白いベレー帽を被った女の子に擬態している。
 黙っていれば只の美少女。買い物をする時は、こうして目立たないように対策している。
「おっとと。好きなとこ連れて行くから、引っ張るなって」
 さてさて。今日はこのお転婆美少女に振り回される事にするか・・・・・・はっ、やはり殺気!?
***
 
 まったく、なんなのさ。ユウキってば鼻の下伸ばしちゃって。
「スクールでも見た事ない子ですね。ナンパでもしたのでしょうか?」
 確かにリーリエの言う通り、見た事無い。家の店でも無いし、ナンパなのかな。だとしたら、フィラの実が沢山入った新作のマオちゃんスペシャルを食べさせなきゃ(使命感)。
「パフェを買い食いしてる」
 スイレンの目線を辿ると、ユウキが女の子にパフェを買い与えて__あぁっ、アーンなんて羨ましい!
 私も料理を作ってあげて、あ、あーんを・・・・・・。
「ブティックに入った。マオちゃん行くよ」
 そしてあんな事やこんな事を・・・・・・にゅふッ。
***

「これなんか似合うんじゃないか?」
 適当な服を手に取り、ラティアスに渡すが、
「フゥンッ」
「分かったって、ちゃんと選ぶから怒るなって。興奮したら擬態が解けるだろうが」
 まったく。俺はコーディネーターでも無いし、女性の好みなんか知らんぞ。
「あれ、ラティアス何処行った?」
 辺りを見回すと、試着室から着飾ったラティアスが出てきた。
「ふーん。似合うじゃん」
 緑色のカットソーに、白のプリーツミニスカート。
 活発なラティアスには驚くほどピッタリな衣装だ。
「せっかくだから買おうか。えーと、値段は・・・・・・」
 ・・・・・・布のくせに高くない?
 え、今の服ってこんなにするの? 俺が今着てる服なんてこんなにしないぞ。
「大変お似合いですよー。お客様ー」
 出たなッ、話しかけてくる店員!
「あらあら。こちらのアクセサリーもつければ、この後のデートも楽しくなりますよー」
「いや、いいです。そんなんじゃないんで」
 これ以上、値段を釣り上げられてたまるか。ラティアスが着てる服の分だけ買って店を出よう。
「おい。そんな目で見ても駄目だ。買うのは服だけな」
 俺は、店員に渡されたネックレスを物欲しげに見てるラティアスを無視して会計に向かった。
***

 お店に入るとバレそうだから、外で待機してたけど。
「むむっ。あの子の服装が変わってる!」
 妄想の世界から抜け出したマオちゃんが目線を鋭くして見たその先に、さっきよりお洒落した女の子が出てきた。
「わたくしだってユウキとショッピングしたいですぅ」
 シロンに負けないくらい冷気を出してるリーリエだけど、少し引っ込めて欲しい。寒い。
「次は何処に行くのかな?」
「もうすぐお昼。なら、ランチですね」
 ずっと尾行してて、私もお腹空いたな。お昼ご飯は海鮮丼が食べたい。
「移動するみたいですっ、行きましょう!」
 ユウキ達が向かってるのは・・・・・・マラサダショップだ。
 うん、マラサダも悪くない。お昼ご飯は大きいマラサダにしよっと。
***

 俺とラティアスは、マラサダを買って近くのベンチで食べる事にした。
「美味いか? お前は辛いの好きだもんなぁ」
 俺は辛いのが食べられないので、少し甘い感じのを買った。うん、美味い。
「ほら、口元ついてんぞ」
「フゥン」
 女の子っつうか、メスなんだし、もう少し落ち着いて食べて欲しいもんだ。
 ラティアスの口に付いてるソースをハンカチで拭った時、知っているような悪寒が襲ってきたが、気のせいだろう。
「もう食べたのか? って、仕方ねぇなぁ」
 俺のマラサダをジッと見ている、食いしん坊なラティアスに思わず苦笑してしまった。
 甘い味も好きなんだっけ。ラティアスが食べやすい位置まで持っていき、
「ほら、口開けろ。あ__」

「いい加減にしとけやッ」
「あたいらの前でイチャコラしてんじゃないよ!」
「そうっスそうっス!」
 あん? 誰だ、コイツら。
「おい『誰だ、コイツら』みたいな顔してんじゃねぇ! こちとら恨みを忘れてねーぞコラッ」
「いやホント誰?」
 こんなダサい服でダサいバイクに乗ってる連中知らないぞ。
「俺らは!」
「あたいらは!」
「泣く子も黙るッ」
『スカル団ッ!』「ッス」
 ・・・・・・あー、はいはい。居た居たッ。
「確かポケモンスクールの前で、無様に負けた連中だよな」
「うるせぇ!」
 まったく。食事中に邪魔しやがって・・・・・・あれ、俺のマラサダが無い。
「あっ、てめッ! 全部食べやがったなっ」
 そっぽ向いて知らんぷりしてるが、
「その口元に付いてるのは、何かな? うん?」
 ラティアスの両頬を引っ張り弄っていると、スカなんちゃら達が煩くなってきた。
「だからっ、イチャついてんじゃねーぞ!」
 バイクを吹かして威嚇してくるが、どうするかね。
 別に蹴散らしてもいいけど、そんな気分じゃないし。
 と、思っていた時__。


「そこまでだよっ」
「見苦しいですね、あなた達」
「嫉妬は醜い」
 ・・・・・・なんだろう。色々と突っ込みたい。
「なんで居るの?」
「愚問だよっ」
「ユウキの居るところに」
「わたくし達ありです!」
 なにそれ怖い。

「くっ、女子を侍らしやがって。あてつけかコラッ」
 なんだかよく分からない状況になってるな。
「いけ、ヤトウモリ! あいつらを毒まみれにしろっ」
「あたいらもやるよ!」
「いくッス!」
 おっと、ヤトウモリが三体出てきた。面倒くさいが、やるしかないか。
「アママイコっ」
「シロン!」
「アシマリ」
 いや、俺の出る幕は無いみたいだ。ここはマオ達に任せよう。なんたって、
『三位一体!』
 この三人が揃うと、何故か俺も敵わないような力を発揮するからな。

「なにッ、俺達のヤトウモリを一撃で!? クソッ、覚えてろよ!」
 スタコラサッサと、バイクに乗るスなんちゃら団。
「いつか潰すッ、覚えとけ!」
「徹底的にねッ」
「兄貴の言う通りッスから!」
 そう言って勢いよくバイクで去っていく、なんちゃら__。
「ゲホッ、普通に帰れよな」
 勢いのせいか、バイクの廃棄煙と砂埃が襲ってきた。

「はぁ。やっと静かに__ラティアス?」
 隣のラティアスを見ると、俯いて震えていた。
「お、落ち着け。なっ?」
 買ったばかりの服が汚れていて、なんて声をかけたらいいか分からない。
「・・・・・・フゥンッ!!!!」
『ラティアス!?』
 擬態が解けてマオ達は驚いているが、説明している暇は無い。
 ラティアスは、まだ姿が見えるアイツらを追って飛んでいった。
「まてまて! 町中でそんな技を出したらッ」
 流星群。幸い他に人は居ないが、後に騒ぎになる。
「あ、もう駄目__」
 ボールに戻そうか考えていたが、もう技は放たれていた。

『__な、なん、ギャアーッ』
***

 とりあえず人気の無い公園に移動したが、
「だからなんで居るの」
「愚問だ__」
「それもういいから」
 シュンと落ち込んでいるマオを放って置いて、一番落ち込んでいるラティアスを見る。
「ほら、その汚れは洗濯すれば落ちるし、落ち込むこと無いだろう」
 ラティアスは、擬態した姿に戻って膝を抱えていた。
「きっと違いますよ」
「ユウキは乙女心が分からない」
 はぁ、やれやれ、と。首を振っているリーリエ達にイラッとするのは間違っているだろうか。
「この服を着て、まだユウキと遊びたかったんだよね? ラティアス」
「・・・・・・」
 マオの言葉に、黙ってコクリと頷いたラティアス。
 別に、遊びくらい違う日に__て、言ったらまた何か言われるし、黙ってよう。

「落ち込むなっての。・・・・・・ほら」
 ポケットから洒落てる小包みを取り出し、中身を見せる。
「フゥ、ン・・・・・・」
 ふっ。驚いてるみたいだな。
「欲しがってたアクセサリー。やるから」
 首に着けてやると、ラティアスはギュッとネックレスを握り締めて、嬉しそうに微笑んだ。
「似合ってるぞ」
 夕方の光に照らされたネックレスは、ハメ込まれているルビーの色と相まって綺麗な紅で輝いていた。

「さて、帰る__」

 __ガシィッ!

「ねぇ、ユウキ」
「わたくし達、行きたい所があるんですが」
「拒否権は無い」

 ・・・・・・どうやら俺の休日は、まだ終わらないようだ。