転生先はポケモン 26話

ガチムチパンプジンレスリング

『さぁ今回の挑戦者はーッ、怒濤の勢いで頭角を現している新星・・・・・・バン・ギライガーだーッ』
 
 __ウォォッ!

 ロイヤルドーム。今日、このリングに新たな伝説が__。
***

「バトルロイヤル?」
「あぁ、アローラ地方伝統の四体同時バトルなんだ。ユウキもやってみないか?」
 夕飯の後、休憩にコーヒーを飲んでいたらククイ博士が面白そうな話を持ってきた。
「リングの上で繰り広げられる、オーバーヒートよりも熱いバトルだ!」
 なにやら燃えてる博士だが、
「でも何で急に?」
 すると、博士はゴホンと咳払いして俺を見た。
「ロイヤルマスクは知っているか?」
「知らない」
「・・・・・・そうか」
 えっ、なんでガッカリしてんの。
「いや、なに。ロイヤルマスクというのはロイヤルドームが開設されて以来、負け無しの連勝トレーナーなんだ。正体不明でかっこいいマスクを着けていてね。更にパートナーのガオガエンも凄く強くて__」
「ふぅん。なんで博士が自慢げなの? もしかして」
「__ッ」
「ファンなの?」
 そこまで熱心に語るとは、よほどの古参ファンと見たね。
「あっ、あぁ。そうなんだよ。もう大ファン!」
「汗が凄いよ?」
 ダラダラと垂れる汗を拭った博士は仕切り直すよう、また咳払いした。
「そのロイヤルマスクが今、挑戦者を募集していてね。最近マンネリ気味だから新しい刺激が欲しいんだよ・・・・・・って聞、聞いてね!」
「へー。それで俺に出てみたら、と」
「そうそうっ。ユウキならロイヤルマスクも満足するだろうからね!」
 なるほど。確かに四体同時のバトルロイヤルは面白そうだ。
「ただロイヤルマスクに挑むには、勝ち抜いて挑戦券を得なきゃいけないんだけど。ユウキには問題ないかな」
「勝ち抜きか・・・・・・うん、分かった」
 しかしロイヤル『マスク』か。ふむふむ。良い事思いついたぞ。
「ユウキ? いきなりニヤついてどうした?」
「何でも無い」
 こうしちゃいられない。今すぐに取り掛からなくては。
「緑の生地に、黒いのも欲しいな・・・・・・」
「ユウキー、風呂空いた__て、あれ?」
 半裸のサトシに声を掛けられた気がするが、返事をしている余裕は無い。
「博士、ユウキの奴どうしたんだ?」
「ふっ。どうやら火をつけてしまったようだ」
「?」
***

『勝者、バン・ギライガーッ。またもや一発で他の三体を吹き飛ばしたーッ。もうコイツらを止められるのは居ないのか!?』

 バンギラスを模したマスクを被った青年。しなやかで歪みねぇ筋肉を惜しみなく披露している謎のトレーナー。
 その正体は、
「600族居ますかーッ? 600族が居れば何でも出来る!」
「出たーッ。バン・ギライガーの決め台詞!」
 ユウキこと、俺です!

『勝ち抜き戦を制したのは、バン・ギライガー! そして同時に、ロイヤルマスクへの挑戦権をもぎ取ったぞーッ』
 ふふ、待っていろロイヤルマスク。連勝を止め、そのマスクの下、公の元に晒してやる!
 うん? 何故って? 特に恨みも何もない。
 ただの好奇心だ。
『さぁっ。ロイヤルマスクとのバトルは明日__なんと、これは!?』
 迷惑極まりない思考をしていたら、反対側のゲートから煙が吹き出し、人影が現れる。

『エーンジョイッ』
 あれは、ロイヤルマスクにガオガエン!?
 試合は明日だが、何故だ?
『なんとッ、サプライズ登場だー! まさかまさかのバトルなのか!?』
 ロープを潜り、此方に歩いてくるロイヤルマスクとガオガエン。
「やぁ、ユウ__バン・ギライガー。凄く強いな、驚いたよ」
 うん? しゃくれた声だが、何処かで聞いたような。
「どうも。何故、此処に?」
「バトルは明日だが、あまりの強さに疼いてしまってね。どうだい? 今、直ぐに」
 とても挑戦的な目付き。いいだろう、受けて立つ。
「ふっ。やる気満々でなによりだ」
 互いに背を向け、位置につく。
『なんという事だーッ。ロイヤルマスクとの決戦が今日になってしまったー! 余熱も冷めぬ内の嬉しいサプライズ!』
 リングの中で、バンギラスとガオガエンが睨み合い、開始のゴングを待つ。
『今回限りの特別ルールで、シングルバトルとなっております! さぁ、会場も今か今かと待ち構えるッ。始まりの鐘が、今!』

 __カァンッ!

『始まったー! バンギラスとガオガエン、掴み合うッ。力は互角か!?』
 いや、僅かにバンギラスが勝っている。コイツと互角とか、そうそう居てたまるか。
 しかし、ガオガエンも経験の賜なのか、上手く力を逸らしているな。
『さすがガオガエン。ロイヤルマスクのパートナーは伊達では無い! 今まで一度の攻撃で勝ち進んで来たバンギラスを止めているーッ』

「バンギラス、ブレーンバスター! (注 ただのストーンエッジ)」
「そ、そんな技あったか!? ガオガエン、躱して地獄突きッ」
 くっ、跳んで躱したか! だが甘いッ。
「ギライガー・スープレックスだ! (注 ただの噛み砕く)」
「なにぃッ」
 地獄突きを脇で抑え、ガオガエンの肩に攻撃する。
「下がれ、ガオガエン!」
 この絶好のチャンス、逃しはしない!
「攻めろッ。ブレーンバスター! (注 ただの以下略)」
「諦めるな、リベンジするんだ!」
 迫る岩石の刃に、ガオガエンは腰のベルトを燃え上がらせ、受け止める。
 やったか!?

『ガオガエン、倒れたか!? ・・・・・・いや、立っているぞーッ。重い攻撃を受けとめ、反撃の狼煙をあげるー!』
 満身創痍ながらも、先程の攻撃を二倍にしてバンギラスに返すガオガエン。
 マズい、リベンジは確か格闘タイプ。なら、バンギラスは__。
「ふッ。このバトル、ブラストバーンより熱いじゃないか」
 バンギラスは辛うじて立っているが、四倍弱点はさすがに効いたようだ。
 恐らく、もってあと一発。
「次で決まるな」
「はい。でも勝つのは俺達です」
 会場も決着の雰囲気を感じ取ったのか、シンッと静まりかえっている。
「いくぞ、ガオガエン!」
「迎え討て、バンギラス!」

 二体は走りだし、リングの中央で腕を振りかぶり__。

『ちょっと待ったーッ!』

 ピタリと止まった。
「誰だ、あんた」
 大事な所を邪魔され、思わず低い声が出てしまった。
「うん? 君は確か、リベンジャーズの」
 ロイヤルマスクの知り合いのようだ。
 金髪のモヒカン。更にピンクのスカーフで顔を半分隠して、まるで世紀末覇者物語に出てきそうな悪者だ。絶対ロクな奴じゃねぇ。
「今回のバトル、なんでもロイヤルドーム最強を決める戦いだそうだな? 俺も参加させてもらうぜ」
 は? コイツ、邪魔したかと思えば、いきなり何を言っている。
「バン・ギライガーは挑戦権を得て、この場に居る。君に資格は無い筈だ」
 ロイヤルマスクもそう言うが、モヒカンは引き下がる様子を見せない。
「うるせぇっ。最強はこのマッドブーバー様だ!」
 喚きほざいたモヒカンは、勝手にブーバーンをリング内に出してきた。
「・・・・・・っけんなよ」
「どうした? バン・ギライガー」
 俯いた俺を心配してくれたのか、ロイヤルマスクは声をかけてくるが、この胸に渦巻く黒い炎は止まらない。
「はっはー! ブーバーン、火炎放射で焼き尽くせぇ!」
 __ブチッ。

「ざっけんな! 良いところを邪魔しやがって、ぶっ殺してやる!」
「ぶっこ!? ちょ、ユウ__バン・ギライガー!?」
 バンギラスと呼吸を合わせ、腕を突き出す。
「全てを破壊し、蹂躙しろ! メガシンカッ」
 四倍弱点をくらいフラフラだったが、今の俺達にそんな蝋燭の火よりも弱い出力じゃビクともしない。
「ギライガー・チョップ! (注 ただの地震)」
「チョップじゃねぇ!」
 モヒカンが何か言ってるが、一撃で葬りさるぜ。
 目を回して倒れ伏せるブーバーン。
「くそっ、覚えてやがれ!」
 ブーバーンを戻し、やっと姿を消したモヒカン。
 だが、まだ気は収まらない。あのモヒカン、次に会ったらどうしてくれようか。
「バ、バン・ギライガー? まだ怒ってるのか?」
 おっと、いかんな。これ以上は無粋。
 落ち着いて深呼吸だ。

「いや、キレてないっすよ」
「そ、そうか」
***

「さて、思わぬゲストが帰った所で・・・・・・どうする?」
 そう、だなぁ。今、決着をつけてもいいが、勿体ないかな。
「やっぱり、最初から最後まで全力でやりたい。だから」
「ふっ、そうか。では別の機会、という事だな」
 そう言い、手を出してくるロイヤルマスク。
「次は余裕で勝ちますよ」
「望むところさ」
 握手をかわし、今日の健闘を讃え合う。そして、俺は腕を引っ張り耳元で、
「精々マスクを洗って待ってろよ? ククイ博士」
「__ッ」
 なにがブラストバーンよりも熱い、だ。そこで俺は気付いたぞ。
『白熱したバトルッ。今回、最強は決まらなかったが・・・・・・ロイヤルマスクにライバル誕生だー!』
 
 会場が震える程の歓声に手を振り、リングを出る。
 
『__バンギ、バンギ、ライガー!』
 背に浴びる応援のエールが、とても心地よかった。
***

 ロイヤルドームを出た後、火照った体を冷まそうと森に来た。
「ふむ。森林浴でもしようと、来たんだけど・・・・・・」
 問題が一つ発生した。

『ベベッ。べッべべ!』
 こいつ絶対ウルトラビーストですわ。
「なぁ。俺の頭で遊ぶの止めてくれない?」
 大事な髪を引っ張り、俺をハゲにしようと企む謎のウルトラビースト。
 体は紫色で、頭の天辺が尖っている。それで刺されたら痛そうだな。
「__って痛ててっ、痛いッ、やめろぉ!」
 俺の頭の上でぐるぐると回転し、ブレイクダンスし始めた生物を掴んで止める。
「貴様、俺の頭蓋骨に穴を開ける気か?」
『べべー?』
 駄目だ。何言ってるか分からん。いや、普通のポケモンの鳴き声も分からんけど。
「仕方ない。ルザミーネさんに連絡しよ」
***
 
 ウルトラガーディアンズの皆が基地に集合し、本題に入る。
『検証の結果、その子はウルトラビーストと結論づけたわ。名前はベベノム。どくばりポケモンね』
 えっ、どくばり? さっき俺の頭で遊んでやがったけど大丈夫か? 
「ちっちゃくて可愛いねー」
「鳴き声も可愛いです!」
「あっ、見てダンスしてる」
 気をつけろ。そのダンスは頭の上でやられたらとても痛い。
『出現したウルトラホールが分かるまでパートナーになって欲しいのだけれど・・・・・・ユウキ君』
「俺ですか?」
『発見者だもの』
 うーん、手持ちはいっぱいなんだけど。
 まぁ。ピカチュウみたいな連れ歩き枠だと考えればいいか。
「分かりました。おい、ベベノム」
 よびかけると、俺の前までフヨフヨと飛んでくる。
「短い間かもしれんが、よろしく頼むな」
 ピクシーが運んでくれたウルトラボールを手に取り、ベベノムに投げる。

『べ? ベッ!』
「おい」
 コイツ避けたぞ。
「・・・・・・よろしくな」
『ベッ!』
 ・・・・・・。
『ベベッ』

「ユウキ、落ち着いて! それはウルトラボールじゃないよッ」
 投げつけようとした金の玉をマオに取られてしまった。
『うーん、見たところユウキ君に懐いているようだったのに。何故かしら?』
 懐いてたら俺の頭でダンスっちまわないぜ。
「もしかして、遊んでると勘違いしてるのでは?」
「どういう事だ?」
 何かに気付いた様子のリーリエだが、よく分からん。
「ボールに入る、という事が分からないのかもしれません」
 なるほど。じゃあ、いっちょやってみっか。
「出てこい、バンギラス」
「バァン__」
「戻れ」
「__バ!?」
 再びウルトラボールを手に取り、ベベノムに向ける。
「いいか? お前、これ触る。入る。オーケー?」
『べべッ』
 すると、投げるまでもなくボールのスイッチに触るベベノム。
「お、おぉん。あっさりと」
『それじゃ、ユウキ君。頼んだわよ』
「はい」
『うん?』
「・・・・・・ウルト、ラジャー』
 せめてもの反抗に小声で言ったが、意味なかったようだ。
***

 その夜、ボールから出てきたベベノムは、
「おいこらベベノム。俺のベッドが紫色に染まっているのはなんでかな?」
『べべー?』
 コイツは尖ってる頭の先端から、ペンキのようなものを吹き出す。
 てかソレ毒じゃね?
 それで落書きして遊んだりするのだが__。
「俺の寝床がベトベトなんだが?」
『べべ?』
「べべ? じゃねぇ! てめぇっ、大人しくボールに戻れッ」
 ボールを握り締め、逃げるベベノムを追いかける。

「うーん。ベベノムは鬼ごっこで遊んでると思ってるね」
 というか、ククイ博士は家に落書きされて怒らないのか。
「ははっ、鬼ごっこか。・・・・・・いいだろう。ただし捕まった時が貴様の命日だ!」
「程々になー」

 本物の鬼神となり、悪戯ポケモンをサーチアンドデスだ。

『べッべー!』

 
 新たな仲間、ベベノムが加わった。
 少し、いや。かなり騒がしくなったが、仲間が増えるのは素直に嬉しい。
 
 楽しそうに逃げるベベノムの姿を見て、少し怒気が削がれるのを感じてそう思った。