転生先はポケモン 20話


 やっぱりシリアス展開嫌いダーテング

 ククイ博士とカキが、縄のロープを持って回転させる。
「さぁリーリエの番だぞ」
「はいっ。行くわよ、シロン」
 今日の授業は、ポケモン達と一緒に縄跳びをするみたいだ。
「それっ」
 リーリエとシロンは呼吸を合わせて飛び跳ねる。
「おぉっ、リーリエやるーっ。俺の番だぜ!」
 縄から抜けたリーリエの後にサトシが入る。
「へへーん、楽勝だぜっ。・・・・・・わわっと」
 サトシの奴、油断して足を引っかけたみたいだ。
「無念のサトシ、哀れ」
 スイレンと一緒にサトシの元に行くと、膝を擦りむいているのに気付いた。
「お前、怪我してるじゃないか。絆創膏持ってくるから待ってろ」
 リュックを取りに行くと、中にほしぐもとこすもが寝ていた。
「ほいほい。ちょっと退いてなー」
 こすもを持ち上げて絆創膏を取り出すと、こすもが起きる。
「せっかくだし、お前も縄跳びをやるか?」
「コッシュ」
 了承したのか、こすもは俺の頭に乗る。
「ほしぐもは起きないのか」
 空いた隙間に、近くにいたモクローをぶち込んで置いて縄跳びに戻る。
***
「ふぅ。僕もう疲れちゃったよ、お腹も空いたし」
「確かに、もうお昼だな」
 大の字に寝っ転がったマーマネを見て、博士は授業を終了させるが、
「あれ? なんかモクローが叫んでるよ」
 少し離れた所でモクローが呼んでいるのに気付いたマオはサトシに訪ねる。
「なんだろう。・・・・・・あぁーっ」
 異変を感じたサトシがリュックの元に行くと、叫び出した。
「ほしぐもが居ないっ」
 なんだって? さっきまで、そのリュックの中で寝ていた筈だ。
「あっ。あれ見てください!」
 その辺を散歩しているのか、と考えているとリーリエが指を指して注目を集めた。
「あれは、ザオボー?」
 遠くでザオボーがほしぐもに接触してるのが見えた。
「リーリエの次は、ほしぐもかっ」
 連れ戻そうと走るが__。
「っ、消えた? テレポートをさせたのかっ」
 くそっ。スクールの中に入り込んでいたなんて、油断したっ。
「ほしぐもと一緒に居たのって、ザオボーだよな?」
 追いついてきたサトシの言葉に、
「ザオボーがどうかしたか?」
 グラジオが現れて疑問を投げる。

「ザオボーがほしぐもとテレポートで何処かに行ったんだ」
「お兄様、心当たりはありませんか?」
 グラジオは腕を組み、目線を下げる。
「恐らく、エーテルパライダス」
 場所が分かっているなら、まだ間に合う。
「グラジオ、こすものテレポートですぐに向かおう。俺とサトシも着いて行く」
「あぁっ」
「分かった」
 しかし、そこで待ったの声が掛かる。
「わたくしも、わたくしも一緒にっ」
 リーリエが真剣な目でグラジオに訴えると、
「・・・・・・勝手にしろ」
 一瞬驚いたグラジオだが、一言言って視線を外す。
「無茶はするなよ」
『気をつけて!」
 ククイ博士達に心配されながらも、サトシ達に視線を向ける。
「準備はいいか?」
 頷いた所で、こすものテレポートが発動した。

 着いた場所は、エーテルパライダス内部。
 地下に続くエレベーターに向かっていると、ルザミーネさんと出会った。
「貴方たち、どうして此処に?」
「ほしぐもを攫ったザオボーが此処に居るかもしれない」
 突然現れた俺達に驚くルザミーネさんだったが、グラジオの発言に納得した様子を見せる。
「そう。地下施設で異変が起きたみたいだけど、そういう事」
 ルザミーネさんを加えた俺達は、張り詰めた様子で地下へと降りていく。
***
 地下に降りた俺達を待っていたのは、機械の檻にほしぐもを閉じ込めているザオボーだった。
「おぉ、代表。どうですか? もうすぐ貴女の望みが叶い__」
「このっ、ほしぐもを返せっ」
 ザオボーが高説を垂れている途中で、サトシが走りだす。
「ぐほっ。このガキ、何を」
 サトシの体当たりで崩れ落ちたザオボー。
「今助けっ、うわぁーっ」
 ほしぐもを助けようと檻に触るが、周りに設置されている防衛装置の電撃がサトシを弾き飛ばす。
「ラティアスのサイコキネシスで、どうにか・・・・・・」
 ボールを取り出した時、檻の頭上で空間が歪み始める。
「来た、ウルトラホールっ」
「ザオボー、マシンを止めなさい!」
 徐々に出来上がるウルトラホールを見て恍惚とするザオボーに、ルザミーネさんは怒鳴りつける。
「代表、何を言っているんです? これこそ貴女が望んでいるモノでしょう」
「っ、望んで、なんかっ。またリーリエを危険な目に遭わせるの!?」
 ザオボーと問答しているルザミーネさんの横で、俺とグラジオは指示を出す。
「ラティアス、サイコキネシスであの檻を防衛装置から引き剥がせっ」
「ブレイククローで檻を壊せ!」
 此方に引き寄せた檻を、シルヴァディの攻撃で破壊を試みる。
「コッシュゥ」
 無事に破壊された檻の中から、ほしぐもがフラフラと出て来た。
「なっ、ウルトラホールが・・・・・・」
 ほしぐもが解放されたからなのか、ウルトラホールが閉じていく。
「ほしぐもっ、怪我は無いか?」
「コーク、コッシュー」
 サトシが心配そうに抱えると、ほしぐもが淡い光に包まれ、
「姿が、変わった?」
 両手で収まるくらい、体が縮んでしまったほしぐも。
「進化なのか?」
 寝ているのか、大人しくなったほしぐもを突っついていると、閉じかけていたウルトラホールが一気に開く。
「何か出てくるぞっ」
 周りに警戒を施すグラジオは、シルヴァディをリーリエの前に出す。
「あれ、は・・・・・・い、いやーっ」
「UB01:パラサイト!」
 恐怖で震え出すリーリエと、歓喜で身を震わすザオボー。
 あの存在は、マズい。背中から冷や汗が流れるのを感じる。
「ルザミーネさんっ、急いでリーリエを連れて__」
 この場から避難させようと振り向くが、
「ルザミーネ、さん?」
「・・・・・・はっ。目を覚ましなさい、ザオボー」
「ルザミーネ代表。せっかく貴女の夢が叶ったのですよ?」
 声を荒げるルザミーネさん。だけど、見間違いじゃない。さっきの彼女は、惹かれていた。
「今日という日をどれほど待ちわび__ぐはぁっ」
 謎のウルトラビーストは白く透明な触手を伸ばし、近づいたザオボーを叩き飛ばす。
「ラティアス、目覚めるパワーッ」
「シルヴァディ、エアスラッシュッ」
 ラティアス達の攻撃が飛んで行き、命中する。
「やったか?」
 土煙に包まれて、状況が分からないグラジオは額から汗を垂らした。
 数秒経ち、煙が晴れると__。

「Ahaー」
 奇妙な鳴き声を鳴らしながら、無傷のウルトラビーストが姿を現した。
「何だとっ、ラティ__」
 指示を与える暇を与えないつもりなのか、ウルトラビーストは虹色に煌めく光の束を放ってきた。
「ラティアスッ、ぐぅっ」
 俺は一撃で飛ばされたラティアスを受け止め、壁に激突してしまった。
「くっ、リーリエは俺が守る!」
 意識を失ったラティアスを抱えてグラジオを見ると、シルヴァディも吹き飛ばされたみたいだ。
「グラジオッ」
 リーリエを抱きしめているルザミーネさんを守るように、手を広げて立ちはだかるグラジオは、後ろからの衝撃で倒れ込む。

「え?」
 唖然とするグラジオと俺達が見た光景。
「母、さん?」
 グラジオを突き飛ばしたのは、ルザミーネさんだった。
「良かった・・・・・・」
 グラジオとリーリエが安心だと分かり、儚げに微笑む。
「お母様・・・・・・」
 ウルトラビーストに連れ去られる母親を見て、リーリエは手を伸ばす。
「お母様ーっ」
 そして、ルザミーネさんはウルトラホールの消滅と共に消え去った。
***
「ザオボー、何故勝手にマシンを使ったッ」
 あの後、バーネット博士とビッケさんが駆けつけてきた。
「ルザ、ルザミーネ代表が悪いんですっ。私は悪くない!」
 弁明するザオボーを見て、バンギラスを嗾けたくなるが、それどころじゃない。
「・・・・・・お母様」
 失意に陥ったリーリエだが、立ち上がってウルトラホールが消えた場所を睨む。
「わたくし、助けにいきます!」
「もちろん、俺も__」
 リーリエの決意に、サトシも賛同すると、
「巻き込んですまなかった。だが、この先は家族の問題だ」
 グラジオが拒否するように声を遮る。
「バーネット博士。もう一度ウルトラホールを開く事は?」
「無理、ね。時間が掛かるし、直ったとしても開いたウルトラホールを安定させられるかどうか分からない」
 グラジオは口元を結び、拳を握りしめる。
「こすものテレポートでも、無理か」
 どんな所に居るのか、イメージがとことん分からない。
「私達が方法を探すわ。だから、あなた達はもう帰った方がいいと思うの」
「ええ。今、あなた達にできることは何も無いわ。大事な時に備えて休んでちょうだい、リーリエ」
 ビッケさんと博士がリーリエを説得していると、サトシが姿の変わったほしぐもをを抱き寄せる。
「それは?」
「ほしぐもです。急に小さくなっちゃって」
 バーネット博士がほしぐもを見ると、何かを小さく呟いた。
「進化の兆し?」
「え?」
 サトシは聞き取れなかったみたいだが、進化と言ったか?
「何でも無いわ。私でも分からないから、今は様子を見てあげて」
「はい・・・・・・」
 そして皆が浮かない表情のまま、家に帰る事になった。
***
「この状況でよく暢気に寝てられるなぁ」
 ポケモン達が寝静まる深い夜。いびきをかいてるサトシに呆れて口元がヒクつく。

 ウルトラホールの場所には、心当たりがある。
「行こうか、こすも」
 日輪の祭壇。こすもと出会った場所。
「コッシュッ」
 もう一度ウルトラホールが現れるかもしれない。

「次は失敗しない」
 リーリエを危険な目に遭わせないと決めて、この結果だ。不甲斐ない結果を晒してしまった。
 リーリエの身は無事だったが、きっと心は傷ついている。

「もう自重しない」
 正真正銘の全力を出していれば、違う結果になっただろう。
 大切な人達を守る為なら、自分の都合は気にしていられない。

「今回は、お前を頼りにしてるよ」
 マスターボールを撫でた後、こすもにテレポートを頼む。

「まったく。俺はシリアス展開は嫌いなんだよ」
 さっさと解決して、いつも通りのスクールライフを送りたい。

 気を引き締めて、俺達は日輪の祭壇へと向かった。