転生先はポケモン 17話

 こんな出会いはフシギダネ

 あちこちでペリッパーやエアームドの群れが気持ちよく飛び回る、気持ちの良い朝。 
 今日はスクールを休んで、とある場所に来ていた。

「まったく。こんな所に何があるってんだ」
 降り立ったのは、変わった模様がある遺跡だった。
 実は夜中に、アローラではまだ一度も出していないポケモンが入っているボールが暴れ出した。
 ただ事では無いと思ったから、ボールが反応する方へラティアスに乗って飛び出して来たんだが、
「別に何も無いじゃないか」
 ボールの震えも止まってるし、骨折り損か?
 それより、帰りどうしよう。夜だったからラティアスの透明化は目立たなかったが、もう昼近くで明るい。俺に透明化は適用されないから目立つんだよなぁ。
「この島って船出てるのかな。最悪は泳ぐか・・・・・・ん?」

 帰りの事を考えて憂鬱になっていた時、遺跡の上の方から何か違和感を感じた。
 長い階段を登った先には祭壇があるだけで、気のせいだと思った瞬間__。
「うぉっ、え。空間が割れてる!?」
 突然、祭壇の真ん中に亀裂が入り徐々に広くなっていく。
 そして、ブラックホールの様な穴が出来上がった。
「なんだ、これ。もしかして、コレの事だったのか?」
 穴が現れた時に、また揺れ出したボールに聞くと、同意しているのか、出てこようとする。
「ちょまっ、タンマッ。お前はマズいっ、落ち着け!」
 出てこないよう必死に抑えてると、目の前の不思議空間に異変が起きる。
「これ以上何があるんだ、勘弁してくれよ」
 後ずさり、念のためにバンギラスが入ったボールを構える。

 緊張で背中に冷や汗が溜まるのを感じる。
 ゴクリと、固唾を飲み込んだ時に__。
「えっ、何か出てきた・・・・・・。ポケモン、か?」
 出てきたポケモンらしき生き物は、宇宙に輝く銀河みたいに綺麗な模様をしていた。
「コシュー、コシュー」
「寝てるのか?」
 まったく動かず、寝息を立てているポケモンを持ち上げると、パチリと空いた目と視線が合う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 無言の時間が続いてどうすればいいか分からん。
「コ」
「コ?」
 おっ、鳴いた。しかし、コイツはいったい、
「コッシューッ!?」
「うわぁーっ!?」
 い、いきなり至近距離で叫ばれたせいで耳が・・・・・・。
「落ち着け、落ち着けって。おー、よしよし」
 くそっ、なんで正体不明のポケモンをあやしてんだ俺。
***
 ポケマメを食べさせて、泣いて暴れるポケモンをなんとか落ち着かせたが、まだ不安そうに周りを見ていた。
「それで、お前は何処から来た。なんで何も無い所から現れた?」
「コー・・・・・・」
 色々と質問をするが、首を振るばかり。
「んー、どうするかな。とりあえず帰りたいんだよな?」
「コッ」
 元気よく頷くので、このポケモンが出てきた所を指さすが、
「お前が出てきた不思議空間はもう消えてるんだよなぁ」
 そう、このポケモンが現れた瞬間、穴は閉じて元通りになったのだ。
「コー、コシュ・・・・・・」
 帰りの手段を失ったポケモンは、また泣きそうになってしまう。
「待て待て、泣くなっ。俺が必ず帰してやるから、安心しろ」
 泣かれるとあやすのが大変なので勘弁だ。
 
 帰すと聞いたポケモンは涙を引っ込めるが、不安の表情は変わらない。
「今はまだ手段が分からないから、時間は掛かるかもしれない。だけど、帰すと約束するよ」
「コー、コシュッ」
 安心したのか、ポケモンは笑顔になり、すり寄ってくる。
「短い付き合いかもしれんが、宜しくな。えっと」
 そういや、なんてポケモンなんだ? ロトム図鑑でアローラ地方に居るポケモンは一通り見たが、載ってなかったよな。 
 じゃあ、
「こすも」
「コ?」
「お前の名前が分からないから、とりあえず付けた名前だ」
 こすもと呼ばれて首を傾げるが、自分の事だと分かると俺の周りを嬉しそうに飛び回る。

「じゃあ、こすもはリュックに入っててくれな」
 背負っていたリュックサックを前に出すと、こすもはスッポリと入り、寝息を立て始めた。
「よく寝る奴だな」
 さっきまで泣き喚いてたくせに、今は顔を緩ませて寝顔を晒してるこすもに苦笑を漏らす。
「さて、帰るか。・・・・・・どうやって?」
***
「はー、やっと帰れた」
 結局、マリルリに掴まって海を泳いで帰った。
 もう夕方近い。スクールも終わってる頃だろう。
「潮風でベトベトだ・・・・・・。ん?」
 ククイ博士の家の前には、乗り物が停まっていた。
「車はリーリエが来ているんだろうけど、あのヘリは何だ?」
 見慣れないヘリコプターを横目に家に入ると、
「もうっ、止めて下さいってばっ」
「んもうっ、照れちゃってー。可愛いわねっ」
 中には予想通りリーリエが居たが、見慣れない人達も居て、その中の一人はリーリエそっくりの女性だった。
「ククイ博士、ただいま。んで、どういう状況?」
「おかえり、ユウキ。書き置き読んだけど、急に出て行ったから心配したぞ」
 一応、出る前にスクールを休む理由を書いて置いたが、予想以上に帰りが遅れたため心配させてしまったみたいだ。
「あー、ごめんなさい」
 博士に謝っていると、背後にリーリエが回って来た。
「いい加減にしてくださいっ、お母様!」
 お母様って、この人が?
 目の前に居るリーリエそっくりの女性は、俺を使って隠れるリーリエを見ると、雷を食らった様に目を見開く。
「ついこの間まで赤ちゃんだったのに・・・・・・」
「そうですっ。わたくしはもう立派なレディなのですっ」
 えっと、本当にどういう状況だ。
「紹介しよう。この人はリーリエのお母さん、ルザミーネさん。エーテル財団の代表だ」
「初めまして、ユウキです」
 キャラの濃そうなルザミーネさんに挨拶すると、俺の事を頭から足下まで舐め回す様に見てくる。
「ええ、知っているわ。所で、リーリエとはどういう関係なのかしら?」
 知ってる? アローラでは目立つ様な事をしてないぞ。
「わたくしとユウキは__んぐっ?」
 変な事を言われる気がして、慌ててリーリエの口を塞ぐ。
「同じスクールで仲良くさせてもらってます」
 そう言い、リーリエの口を解放するが、
「もうっ、ユウキは大胆ですね。ですが偶にはこういう強引な感じも悪くないです。次は口で・・・・・・」
 小さい声で何かボソボソと呟き、顔を恍惚とさせるリーリエ。
 リーリエって、いつからこんな・・・・・・。
「あぁ、私の赤ちゃんが・・・・・・。でも、ユウキ君なら・・・・・・」
 ルザミーネさんも、リーリエと一緒に小さく何かを言っている。本当に親子なんだなぁ。
「ごほんっ。そしてエーテル財団の研究に参加しているバーネット博士だ」
「アローラ! よろしくね」
 バーネット博士と挨拶を交わしていると、ルザミーネさんが復活して、他の二人を紹介する。
「この人達は、財団の職員よ」
「ビッケです。ポケモン保護活動を担当してます、宜しくねー」
「研究部門チーフを担当してます、ザオボーです」
 ビッケさんはともかく、ザオボーと名乗った男は何か信用出来な感じがするな。
「それで、サトシ君。ほしぐもちゃんに会わせてくれるかしら?」
 ザオボーに怪訝な目線を送っていると、ルザミーネさんはサトシに何かを頼んだ。
 ほしぐもってなんだ?
「あっ、はい」
 サトシが背負っているリュックを開けると、こすもと同じポケモンが眠っていた。
「あれ、こすもじゃん」
「こすも?」
 サトシが聞き返してくるが、あぁそっか。サトシはほしぐもって名付けたのか。
「いや、俺も出会ったんだよ。ほら」
 俺もリュックを開けて、こすもを皆に見せる。
『え』
 ん? 皆が口を開けて、間抜けな感じになってるぞ。
「えっと。みんな、どうし__」
『二体目ぇっ!?』
 あぁぁっ、二回目ぇっ。
 本日二度目の、鼓膜破壊だった。
***
 場所は移り、地下の研究室。
「日輪の祭壇ですって? 私達が行った時は何も反応無かったのに」
 出会った経緯を話すと、ルザミーネさん達は興味深そうに、こすもを見る。
「でもでもっまさか、ほしぐもが二体も居たなんてな」
 サトシも見ていると、こすもは急にサトシに体当たりを繰り出した。

「サトシ。コイツはこすもって名前を付けたんだ」
「コッシュッ」
 こすもも同意する様に鳴いて頷く。
「そ、そっかぁ。宜しくなこすも」
 サトシがほしぐもを抱いて、こすもと遊び初めた傍で、バーネット博士がパソコンを弄って話し出す。
「やはり、その子達はウルトラビーストみたいね」
『ウルトラビースト?』
 俺とサトシが揃って首を傾げていると、リーリエが得意げな表情で説明を始めた。
「はるか昔、異世界から来た不思議な生き物と、アローラの守り神との間に激しい戦いが繰り広げられた・・・・・・。そして、その異世界の不思議な生き物をウルトラビーストと呼ぶんです」
 説明が終わると、ふんすっ、とドヤ顔を見せるリーリエ。
 ルザミーネさんは、そんなリーリエを抱きしめて、
「よく勉強してるわねぇっ。流石、私の赤ちゃんよっ」
「だからっ、わたくしはもう赤ちゃんじゃ・・・・・・。もうっ、恥ずかしいからユウキの前でだけは止めて下さいっ」
 親子のじゃれ合いを無視して、俺達は話を続ける。
「こすも達は本当にウルトラビーストなんですか?」
「異世界やウルトラビーストと関係の深い物質に、ウルトラオーラというものがあります。我々の研究所では常にそのオーラの数値を計測しているのですが・・・・・・ビッケ君」
 俺の疑問に答えたザオボーは、ビッケさんにモニターを映させた。
「ゆうべ、ポニ島にある日輪の祭壇辺りで異常に高い数値のウルトラオーラが計測されたんです」
 うーん、そのオーラの正体がこすもって事か? いや、ほしぐもの事もあるし・・・・・・。
「あーっ、ここだっ」
 モニターに移った日輪の祭壇を見ると、サトシは大きく声を上げた。
「サトシ、近くで叫ぶのは勘弁してくれって」
 苦言を呈するが、サトシは聞いていないみたいだ。
「昨日見た夢、俺ここにいたんだっ。それで、ソルガレオとルナアーラが空から現れたんだ。で、そのあとっほしぐもが光の中から・・・・・・」
「ソルガレオにルナアーラ・・・・・・。ルザミーネっ」
 サトシの話に、バーネット博士達に緊張が走る。
「伝説として語られるウルトラビースト・・・・・・。サトシ君、ユウキ君。ほしぐもちゃん達を私達エーテル財団に預けてくれないかしら?」
 ルザミーネさんは俺達にそう言うが、サトシの顔を見ると、答えは決まっているみたいだ。もちろん、俺も。
「俺は約束したんです。ほしぐもの世話をするって、ソルガレオとルナアーラに。だからこいつの世話を俺がします!」
「ユウキ君は?」
「こすもは、俺が面倒見ますよ。元の世界に帰すって約束しましたから」
 俺達の答えを聞いたザオボーは、不機嫌な顔で前に出てくる。
「あのねぇ。ウルトラビーストは君たち子供には荷が重すぎるんですよ」
「ザオボーッ」
 ルザミーネさんはザオボーの言葉を遮ると、今度はリーリエが不機嫌な顔で俺達の前に出た。
「ユウキとサトシはカプ・コケコからZリングとZクリスタルを貰ったとっても強いトレーナーなんですよッ」
 俺は後から貰ったけどね。いや、別に根に持ってないよ。
「カプ・コケコって島の守り神の・・・・・・」
 それを聞いたビッケさん達は、驚いた表情で俺達を見てくる。
「ですが、ウルトラビーストを連れていては、何者かに狙われるかもしれません。・・・・・・そうなったら、大事な研究材料が」
 それでも納得していないザオボー。後半聞こえなかったが、不穏な感じがするな。そこで、ルザミーネさんが口を挟む。
「私は代表の仕事で色んな所に行くから知ってるけれど、ユウキ君はポケモンリーグ優勝の実力を持ってるから心配ないわよ? ユウキ君、サトシ君。貴方たちを信じるわ」
「そんな、ルザミーネ代表っ」
 
「貴方たちがウルトラビーストに出会った事に何か意味があるかもしれない。それを、私も知りたいの。でも、困った事があったら連絡してね」
『はいっ』
 良かった、分かってくれたみたいだ。

 一通り話が付いたところで、腕の中のこすもを見ると、いつの間にか眠っていたみたいだ。
「ところで、ユウキ君。私の赤ちゃんとはどこまでイったのかしら?」
「もうっ、お母様っ」
 そうだ、意味が分からない事を言う母親に何か言ってやれ。
「わたくしとユウキはここまでシたので、赤ちゃんではありません」
 
 なに言ってんの?

 暴走して変な事をルザミーネさんに語り出すリーリエを止めて、早く風呂入りたいと、海水でベタベタな俺はため息を吐いた。