転生先はポケモン 9話

ショッピングでブーピッグ

今日は休日。なので、俺は時間を気にせず惰眠を貪っていた、のだが……。
「おい、弟よ。これはどういう状況だ?」
「いや、これは……」
 家の中が騒がしかったので、起きて顔を洗おうと洗面所に向かったら__。
「床はビショビショだし、洗濯機は壊れてるし……なにやった?」
「わざとじゃないんだ! シーツとか汚れちゃったから……」
 話を聞くと、ククイ博士は用事で家を出ている様だ。
「ふーん、なるほど。後で謝っとけよ。さてっと」
 博士が居ないので、俺達のご飯を作ろうとキッチンに向かう。
「あ、まって!」
「ん、なんだー? ……サトシ」
 何を作ろうと考えながら冷蔵庫を開けると、食材が何も無く、空っぽだった。
「お腹空いたから、料理したんだけど……」
 台所を見ると、物体Xが捨てられていた。
「お前、料理出来なかっただろが」
「うん。でも入ってた物をそのまま食べようと思ったら、ロトムが料理しろって」
 元凶であるらしい、ポケモン図鑑を責める様に見詰めると。
「僕の言う通りにやれば失敗はないロト。……サトシを除いて」
 どうやら、サトシの行動が予想外すぎたらしい。
「仕方ない。買い物に行こう」
 今日は一日中、だらだら過ごす予定だったのになぁ。
 不本意ながら、俺達は買い物に出かけた。
****
「えっと、食料はショッピングモールか」
 肉などを買うため、目的地に向かっていると。
「あれ、もしかして」
 サトシが突然走り出すと、その先にはマーマネがいた。
「アローラ、マーマネも買い物か?」
 マーマネに声を掛けると、遠慮がちに答えた。
「ぼ、僕はアイスとか」
「アイス!? 俺も食べたいっ」
 サトシはアイスと聞いて、俺を期待の眼差しで見てくる。
「はぁ……。じゃあ俺は買い物済ませちゃうから、行ってきな」
「よっしゃーっ。行こうぜマーマネ!」
 俺からお金を受け取ったサトシは、マーマネと一緒に走って行った。
「さて、行くか」
 二人を見送った後、食材売り場に向かう。

「あとは、野菜に……。ついでに調味料を」
「あれ、ユウキ?」
 買い物カートに商品を詰め込んでいると、後ろから声を掛けられた。
「ん、マオか」
「アローラ! ユウキも買い物?」
 マオは俺だと分かると、買い物袋を持って近づいてくる。
「あぁ。マオもか?」
「うん。お店のお使いでね」
 その後もマオと雑談をしながら買い物を済ませて、会計を終わらせる。
「ねぇ、まだ時間ある?」
 そろそろサトシと合流しようと考えていたら、マオが可愛く首を傾げて訪ねてくる。
「そうだな、サトシはマーマネと一緒に居るから大丈夫だ」
 荷物もそんなに多くないので、マオに付き合う事にする。
「やったっ。じゃあ、一緒にパンケーキを食べに行こっか」
 俺の了承を聞くと、嬉しそうにする彼女。
 可愛い。
「こっちだよっ」
 マオに手を引かれて、お店に向かう。
 その時__。
 ショッピングモール内に、けたたましいサイレンの音が鳴る。
「な、なに!?」
 マオや周りの客が驚いていると、幾つものシャッターが下りて、店内に閉じ込められた。
 さらに主電源が落とされたのか、灯りが消えて真っ暗になる。
「なにかあったのかな……」
 マオが不安そうにして、掴んでいた俺の手を強く握った。
「大丈夫だよ」
「ユウキ……」
 しっかりとマオの手を握り返し、安心させる。
「あれっ。アマカジ?」
 マオが自分の周りを不思議そうに見る。
「アマカジッ!? どうしよう、ユウキ。アマカジが」
 さっきまで一緒に居たアマカジが居ない。
 どうやら先程のサイレンに驚いて、何処かに行ってしまったみたいだ。
「暗いし危ないから、マオは此処に居て。俺が探しに行ってくるよ」
 暗闇の中でむやみに歩くと危ないので、手を離してマオを此処に待機させる。
「待って、私も行く」
 説得しようと振り向くが、マオは何を言っても聞かない様な目をしていた。
「離れるなよ……」
 俺は呆れながら、手を差し出す。
「うんっ」
 暗い店内の中、アマカジを探して歩き出す。
「あれ? ねぇ、あそこ見て」
 マオが指さした方を見ると、扉が開いていた。
「変な所でセキュリティ低いな」
 言いながら中を見ると、上へと続く階段があった。
「登ってみようよ」
 そう言うマオに手を引っ張られて、階段を登っていく
 暫く歩いていると、屋上に出た。
「ユウキッ」
「ジャリブラザー!?」
 屋上にはサトシにマーマネ。
 さらに、ロケット団が居た。
「アマカジッ! 良かった、探したんだよー」
 マオは、漸く見つけたアマカジを抱きしめた。
「サトシ、これはどういう状況なんだ?」
「さっきピカチュウとはぐれちゃって、探して此処に来たんだ。そしたら、あいつらが」
 なるほど、俺達と似たような状況だったのか。
「けっ。邪魔が入ったからって関係ないわ!」
 ロケット団のムサシは、ミミッキュに指示を出す。
「ミミッキュッ、シャドーボール!」
 ピカチュウに向かって放たれるシャドーボール。
「くっ、まだやるのかお前ら!」
「もう一度、トケデマルのびりびりちくちくでっ」
 サトシとマーマネはポケモン達に指示を出す。
 俺も、バクフーンを出そうとするが__。
「キュウゥー」
『げっ』
 夕日をバックにして、此方を見るポケモンが居た。
「また、この展開ニャ」
 そのポケモン__キテルグマは、ロケット団の方に飛び降り、彼らを抱きかかえて跳んでいく。
『なにこの感じー』
……最近バトルしてないなぁ、俺。
****
「ところで、なんでマオが?」
 ショッピングモールを出た俺達は、帰り道を歩いていた。
 サトシは、なぜ俺とマオが一緒に居たのか疑問の様で、聞いてくる。
「買い物の途中で会ってな、その後にパンケーキでも食べないかと誘われたんだけど、急にシャッターが閉まったから」
「なるほどー。せっかくのデートが残念だったねーマオ」
 マーマネはデートだと思って、マオを茶化す。
「そんなんじゃない、と思うけど。もし、そうだったら嬉しいなぁなんて思ったり……」
「パンケーキ!? 俺も食いたいっ」
 サトシが変な所に食いついて来て、マオの言葉が後半聞き取れなかった。
「……行って来たらいいと思うよ、今から」
「マ、マオ?」
 マオがサトシを心なし睨んで、口を開いた。
「あ、いたいた。おーいっ」
 そこに、駆け足でククイ博士がやって来る。
「書置きで買い物に行くってあったから、探したぞー」
 すると、サトシはバツが悪そうに博士の前に出る。
「博士、ごめんなさい。俺、冷蔵庫のモノとか……」
 だが、ククイ博士は気にしていないという風にしながら喋る。
「分かってるさ。丁度いい、今日はアイナ食堂でディナーにしよう。皆も一緒にね」
「よっしゃーッ。俺、ポテト大盛りっ」
「僕はミックスグリルー」
「こらこら。サトシは少し遠慮しろって」
 俺は調子に乗っているサトシを諫めながら、マオの方を向く。
「今日は何も食べてないから、早くマオの手料理が食べたいよ。楽しみにしてるね」
 そう言うとマオは、さっきまで不機嫌そうな顔から笑顔に変わった。
「うんっ。マオちゃんのスペシャル料理をお楽しみにっ」

 俺とマオは自然と手を繋ぎ、皆と一緒に歩いた。