転生先はポケモン 5話

歓迎会でサプライズルズキン 後編

三番目のサプライズは、水辺のあるフィールドに連れてこられた。
「次は、私のアシマリと水泳勝負だよ」
 スイレンは、抱えたアシマリを水中に放ちながら言う。
「よっし、頑張ろうぜピカチュウ!」
「ピカピ!」
 サトシはピカチュウしか連れてないとはいえ、水ポケモンには多少厳しいんじゃないか?
「そういや、ユウキはバクフーンしか出してないけど、この勝負どうするの?」
 マーマネが、炎ポケモンしか持ってないと思っているのか、心配して聞いてくる。
「あぁ、大丈夫。ちゃんと適任なのがいるよ」
 俺はそう言って腰のボールに手を掛ける。
「行ってくれ、マリルリ」
「ルリュゥ!」
 俺はバクフーンだけじゃなくて、手持ち六体埋まっている。
 まぁ、そのうち三体は迂闊に出してやれないんだが。
「ユウキのマリルリ、後で触らせてくれない?」 
「あ、あぁ。構わないよ」
 スイレンが心なし、目を輝かせて詰め寄って来て、驚いた。
 水ポケモンが好きなんだなぁ。
「じゃあ、ルールを説明しますね」
 リーリエが軽く、ルールを述べていく。
 要は、この百メートルの水路を早く泳ぎ切ったチームが勝ちの様だ。 
「じゃあ、用意はいいですね? ……スタートです!」
 リーリエの合図と同時に、マリルリに指示を出す。
「マリルリ、ぶっちぎれ!」
 サトシとスイレンも遅れずに指示を飛ばすが、すでにマリルリから数メートル以上離されていた。
「うわ、はっやいなぁ」
「ユウキのポケモンは、とても良く育てられているんだな」
 マオ達は、あまりの速さに驚愕する。
「マリルリ、ゴールです!」
 結果はマリルリがトップだったが、意外にも早くアシマリが追いついてきた。
「スイレンのアシマリは良く育てられているな。あんなに距離を縮められるなんて驚いたよ」
 本当に俺のマリルリは優秀だと思っていたが、まだまだという事か。
 そう本心から褒めると、スイレンは照れたように笑ってアシマリを抱えた。
「えへへ。あ、そうだ。マリルリ触らせて」
 そう言って、すでにマリルリを撫でているスイレンを横目にサトシの元に向かう。
「サトシ、ピカチュウ。お疲れ」
「あぁ、また負けちまったぜー。でも、よくやったなピカチュウ」
「チャァ」
 負けても、へこたれずに次の勝負に燃える。それがサトシのいい所だな。
 「じゃあ、次だな。グラウンドに行くぞ。俺に着いてこい」
 どうやら次は、カキの様だ。
 スイレンに、こねくり回されているマリルリをボールに戻して、カキの後を追う。

 グラウンドに出ると、ケンタロスが三匹いた。
 「俺のサプライズは、このケンタロスに乗ってレースの直接勝負だ」
 おっと、これはいい勝負になりそうだな。
「おおっ、ケンタロスだ! この勝負なら絶対負けないぜ!」
「カキも、牧場で普段乗ってるからそう簡単にいくかなぁ? じゃあ、合図出すよ」
 ケンタロスに乗り、横並びで位置につく。
 「よーい、ドン!」
 マーマネの合図と同時に、三匹同時に走り出す。
 「むっ、意外とやるな」
 「へへっ、ケンタロスは捕まえた事があるからな」
 そう、サトシはケンタロスを捕獲した事がある。
 三十匹ほど。
 さらにカロスでは、一緒に公式のケンタロスレースに出場した事もあるからな。
 「だが、勝負はここからだ!」
 「負けないぜ!」
 カキとサトシが速度を上げる。
 俺も負けじと、追いかける。
 「うぉぉっ」
 「まだまだぁ!」
 「負けるか!」
 ゴール付近で、三匹ほぼ横並びで疾走する。
 「ゴールッ! これは……接戦すぎて、わからなかったよ」
 マーマネが申し訳ないという顔で言う。
「なら、皆一位という事で良いだろう。二人とも、いい走りだった」
 カキが晴れ晴れとした笑顔で、握手を求めながら言う。
「凄く楽しかったぜ!」
 サトシが、握手を返しながら言った。
「俺もだ」
 もう時間も昼時、サプライズはこの辺で終わりかな、と思っていると、ククイ博士が此方に歩いてきた。
「やぁ、楽しんでいるかい? 五番目のサプライズは……僕とポケモンバトルだよ」
 ここにきてのポケモンバトルだ。サトシのテンションが見るからに上がっていく。
「おっしゃぁ! やっとバトルだぜ!」
 サトシが、早速と言わんばかりにバトルフィールドに向かおうとすると、マオが呼び止める。
「その前に! アイナ食堂の看板娘、マオちゃんが腕を振るった料理でランチタイムだよ!」
 もう昼時だもんな。サトシも言われて、腹を鳴らす。
 そして、マオを先頭に、昼食を摂る場所に向かう。
****
「んぐっ、んめぇ!」
 サトシは、プレートに盛られたご飯を勢い良く、かっこんでいく。
「アイナ食堂はね、美味しくて大人気なんだよ」
 そう言う、マーマネも美味しそうに食べていた。
「ふふっ、どう? マオちゃん特製のアローラプレートは」
 マオが作ったという、アローラ伝統の家庭料理は、ククイ博士の家で食べた料理より美味しく感じる。__いや、博士のも、もちろん美味しいけども。
「あぁ、アローラに来てから、これほど美味しいと感じた料理はないよ。毎日作って欲しいくらいだ」
「えっ!?」
 これほどの美味さなら、毎日でも飽きないからな。
「これは……」
「だ、大胆ですね」
「ふぇ、毎日ってそういうっ!? え、嬉しいけど、でもでもっ」
 ん? 女性陣がなにやら、あたふたとしている。
「ユウキ、お前って奴は……」
「これが天然フラグメーカー、僕は初めて見たよ」
「ユウキの言葉に、マオはまさにメロメロってやつだね」
「これも、うんめぇ!」
 男性陣も、何か言っている。サトシはもう少し、落ち着いて食べような。
「ん?」
 気のせいか。今、何か聞こえたような。
「カプゥーッ」
 いや、これは!
「今の声はっ」
 サトシも聞こえた様で、立ち上がって辺りを見回す。
「今の鳴き声は確かに__」
 ベランダの方に顔を出すと、下から黒い影がひょっこりと出てきた。
「うわっ」
 いきなり目の前に現れた、影の正体。それは、カプ・コケコだった。
「カ、カプ・コケコ!?」
「守り神が、なんでここに?」
 皆が驚いていると、立ち上がったサトシはカプ・コケコに話掛ける。
「驚いたぜ、でも良かった。お礼、まだ言えてなかったから」
 サトシはそう言いながら、腕のリングを見せる。
 そういや、入学初日に皆からZリングの事を追及されたなぁ。
「カプゥ?」
 カプ・コケコは首を傾げて、サトシの周りをグルグルと浮かんで__。
「あっ!?」
 なんと、サトシの帽子を咥えて飛んで行ってしまった。
「あ、まてっ」
「おい、サトシ!」
 カプ・コケコを追いかけるサトシを、追いかける。
「ちょっ、二人とも待って!」
 後ろから皆も、慌てて追いかけてくる。
****
 追いかけていると、サトシが急に足を止めた。
「もしかして、バトルしようってのか?」
 そう言うサトシの前に、カプ・コケコが帽子を返しながら、返事をするように小さく鳴いた。
「おいおい、どうなってるんだ?」
 俺がサトシに追いついて、少し後に皆も追いついて来た。
「バトル、するみたいだよ」
 そう言うと、リーリエが乱れた息を整えながら、口を開く。
「ふぅ、私、本で読んだことがあります。カプ・コケコはとても好奇心旺盛なポケモンで、昔から島の人達にポケモンバトルやアローラ相撲を挑むことがあったと」
 バトルはわかるが、相撲って……。
「わかった、やろうぜ。カプ・コケコ」
 サトシがそう言うと、カプ・コケコは大きく鳴き、体から光が溢れだし、周囲を黄色い光の空間で包む。
 確か、これは__。
「サトシ、エレキフィールドだ!」
「はい。この中では、電気タイプの技の効果が上がります!」
 俺とリーリエが説明し、サトシに注意を呼びかける。
 そして、同時にカプ・コケコが体に電撃を纏って突進する。
「ピカチュウ! 避けてから、十万ボルトだっ」
 指示通り、ギリギリで避けてから、電撃を飛ばす。
「カプゥ?」
 だが、直撃したはずの攻撃にビクともせず、相手は首を傾げるだけだ。
「なっ、効いてない!?」
 サトシが、ピカチュウの自慢の技がほとんど通じていないのに驚愕していると__いつの間にか、目の前にカプ・コケコが現れ、手を振り上げていた。
「っ!?」
 サトシは反射的に腕を目の前で交差させる。
「カプッ」
 カプ・コケコは、サトシに危害を加えるのではなく。
 腕のZリングに触れて、埋め込まれているクリスタルを光らせた。
「もしかして、使えって事か?」
 カプ・コケコは、こくりと頷くと距離を取った。
「どうすればいいのか、さっぱりだけど……やってやろうぜ。ピカチュウ!」
「ピカピ!」
 サトシとピカチュウは、気合を入れて構える。
 すると、カプ・コケコがくねくねと動き出した。
 サトシも、その動きをまねて動くと、一際眩しい光がピカチュウを包んだ。
「これが、俺達の、全力、だあぁっ!」
 サトシとピカチュウの動きがシンクロし、共に拳を前に突き出すと、激しい電撃がカプ・コケコを目掛けて、勢いよく飛んでいく。
 カプ・コケコに直撃すると、辺り一帯が爆風に包まれる。
 同時に、技を放ち切ったサトシのZリングを見ると、クリスタルが砕けるのが見えた。
「やった、のか?」
 サトシがそう言うと、砂埃も収まった正面の視界から影が飛び出してきた。
__その影は、やはりカプ・コケコだった。
「カプゥ、カッ」
 カプ・コケコは、傷もあまりついてない様子で首を傾げて、そのまま何処かに飛んで行った。
「あっ、カプ・コケコッ! うっ」
 サトシが追いかけようとするが、躓いた。
「おい、大丈夫か?」
「なんか、凄く疲れた」
 座り込んだ弟に肩を貸すが、どうやらZ技というのは、かなり体力を使う様だな。
「さっきのは、電気タイプのZ技。『スパーキングギガボルト』だな」
 ククイ博士がそう説明する。なるほど、タイプ毎にZ技があるのか。
「クリスタル、砕けたか。まだZ技を使うのは早いという事だ、試練だって受けてないしな」
 カキがそう言うと、サトシは顔を俯かせてしまった。
 思い出すと、入学初日。リングの事を聞かれた時、カキは厳しい態度だったな。Z技は神聖なモノと言っていたし、中途半端は許さないのだろう。
 だが、サトシは俯かせた顔を上げ、何かを決意した目で口を開いた。
「俺、島めぐりに挑戦する! 島めぐりの試練を受けてZクリスタルをゲットして、今度こそちゃんとZワザを出せるようになるよ」
 それでこそ、サトシだ。
「あぁ、俺も一緒に。あんな凄い技を見せられたら、な」
 すると、周りの皆が次々に喋る。
「いいね、それ! 私、応援するよ」
「私も」
「わたくしもです」
「僕も」
「まさに、友情のアシストパワーだな」
 そして、皆の目線が肌の焼けた半裸の青年に向かう。
「……協力しないとは、言ってないだろ」
 ツンデレかっ!?
「ありがとう、カキ!」
 カキは、サトシの言葉に照れて顔を背ける。
 そんな反応がおかしく、皆で声を出して笑った。
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 見上げると、もう空が赤く染まっていた。
 今日は楽しかった。友人からのサプライズで胸をときめかせるのは久しぶりだ。
 そう言えば、今日のお礼を言っていなかった。
「みんな」
 帰り道、前を歩く友人達を振り向かせ、一言。
「今日はありがとう」
 夕日に照らされて眩しかったせいか、ぎこちない笑顔になってしまった気がするが、まぁいいだろう。
 もう一度空を見上げ、夕日が綺麗だと改めて思った。
 
 明日もいい日になりそうだ。

__なお、ユウキは知らない事だが。
 あの時、笑顔を見た女性陣は何故か、胸がモンモンすると言っていた。